資料せんに回答することの是非
※2016年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
この時期には、税務署からの資料せんが数多く届きます。
そこで、よく聞かれる
「資料せんって回答しないとダメなの?」
「回答・返送しないとどうなるの?」
という質問を解き明かしたいと思います。
税務署からの接触(郵送物・電話・対面など全てを含む)
行為は、法的に大きく2つに分けることができます。
「行政指導」と「質問検査権の行使」(税務調査)です。
税務署からの「お尋ね」(資料せん)は「行政指導」に
該当することから、その回答・返送については
「任意」となっています。
※税務調査の一環なのであれば、「質問検査権の行使」
となりますので、その旨の記載があれば
回答・返送「義務」があります(受忍義務)。
「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定に
ついて(法令解釈通達)」1−1〜1−2
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/01.htm#a01_1
また、行政手続法の規定により、行政指導に従わなくても
納税者に不利益がないことが法的に担保されています。
行政手続法第32条第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が
行政指導に従わなかったことを理由として、
不利益な取扱いをしてはならない。
以上のことから、資料せんに回答・返送しなかったことで
税務署から以後、不利益な取り扱いを受けることは
「法的には」あり得ないことがわかります。
さて、「法的には」理解できたところで、
「現実的には」どうなのでしょうか?
税務署ごとに資料せんを発送する基準は違うのですが、
どの税務署も資料せんの取扱いは一緒で、
資料せんの回答・返送がない納税者、および
その顧問税理士をチェックしているわけではありません。
つまり、現実的に考えても、資料せんに
回答しないから、税務調査先に選定するなど、
納税者に不利になることは、内情としても無いのです。
なお、回答・返送がない場合、税務署は2回目の
発送(督促)を行いますが、これは機械的に
行っている行為であって、それをもって
税務調査先への選定を行っているわけでもありません。
むしろ・・・です。
資料せんを真面目に回答したが故に、
税務調査先に選定されるリスクは高まると言えます。
なぜなら、回答した資料せんと、取引先等との
数字が合わない場合(現実にはよくあるわけですが)、
それを理由に調査先選定される可能性が上がるからです。
税務署が税務調査先を選定する大きなポイントとして、
「数字が合わない」「内容がよくわからない」
などが挙げられます(税務署のわからない、を
解消するのが税務調査とも言えます)。
資料せんがあるために、このように認識されてしまい、
税務調査に選定されるなら、それはまさに
「やぶへび」以外の何物でもありません。
法的な取扱いは当然、実務上の取扱いまで
理解したうえで、資料せんに回答・返送すべきかを
きちんと判断すべきでしょう。
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