身分証明書のチェックから
今回のテーマは、『身分証明書のチェックから』です。
税務調査の現場において、調査官の身分証明書を
チェックしない税理士が多いことには驚くばかりです。
私も調査官時代には、納税者・税理士に身分証明書の
提示を求められたことは非常に少ないというのが実感です。
身分証明書の提示を求めるのには意味があるのです。
まず調査官が携帯している身分証明書は2種類あります。
(1)写真を貼付した身分証明書
これは調査官が国家公務員であることの証であり、
本人確認する必要から写真の貼付があり、
所属官庁(~税務署など)が記載されています。
(2)質問検査章
調査においては、こちらのチェックが「絶対に」必要です。
質問検査章の書式は「国税質問検査章規則」という
法律において定められており、その書式は
別表第一において用紙サイズまでも規定されています。
記載事項を列挙すると、
①「○○税に関する質問検査章」
②職官:「調査官・上席調査官・統括官」などの職官の記載
③氏名
④生年月日
⑤所属税務署名
⑥税務署長の印鑑
ここで絶対にチェックしなければならないのが①です。
○○には、その調査官が保持する質問検査権の税目が表示されています。
○○に「法人税・源泉所得税・消費税・印紙税」と記載があれば、
その調査官には、その4税目に関する質問検査権のみが与えられており、
当然ながらそれ以外の、例えば所得税などの質問検査権がありません。
当り前のことのように感じるかもしれませんが、
調査の現場では当り前ではありません。
社長の収入や個人の通帳を見せてください、など
調査官は平気で要請してきますが、これが(法人の)源泉所得税に
かかわらないことであれば、明らかに所得税の質問なのです。
質問検査権がないにもかからず、調査官が質問検査権を行使した場合、
刑法193条の公務員職権濫用罪が適用になることはきちんと
覚えておくべきことです。これは、質問検査権の範囲を逸脱した
不当な税務調査とまったく同じ適用です。
また、調査官に対して身分証明書の提示を求めたにもかかわらず
調査官が不携帯だった、もしくは提示を拒否した場合は、
納税者は税務調査を正当に拒否することができます。
これは調査官に身分証明書の携帯と、請求があった場合の
提示「義務」が法律上明記されているからです。
(法人税法第236条等)
なお、身分証明書のコピーは、法律上禁止されていますので
調査官にコピーの依頼はしてはなりません。
調査開始時には身分証明書の提示を求め、税目だけは
絶対にチェックしてから調査を受けるようにしてください。
※2011年8月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。