身分証明書の提示義務
税務署の異動も終わり、7月下旬から
本格的に税務調査の時期に突入します。
秋の税務調査は春と違って事務年度の終わりがないため、
混迷を極めると年越しもあり得ります。
さて税務調査の本格時期を見据え、今回のブログでは
税務調査の「入口」について書こうと思います。
税務調査が開始されるにあたり、
調査官が来社した際に行うことが、
「名刺交換」ではなく「身分証の提示」です。
※身分証の何を見るのかについては、
「VOL.120 身分証明書のチェックしていますか?」を
再度チェックしてください
本来は、こちらから提示請求をしなくても、
調査官から身分証を見せるべきものですが、
請求しないと見せない調査官も往々にしています。
実際にはないとは思いますが、
身分証明書の提示請求をした際に、「見せられません!」と
言った調査官がいるとすれば、それは「法律違反」になります。
法人税法第157条(身分証明書の携帯等)
国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、第153条又は
第154条第1項若しくは第2項(当該職員の質問検査権)の規定
による質問又は検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
※他の税法にも同規定が存在します
「提示しなければならない」と書いている以上、
この規定は任意ではなく調査官の「義務(強制)」となるわけです。
また、名刺は身分証明書の代用品にはなり得ません。
これは来年以降の税務調査でも同じです。
国税通則法第74条の13(身分証明書の携帯義務)
国税庁等又は税関の当該職員は、第74条の2から第74条の6まで
(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査、提示若しくは
提出の要求、閲覧の要求、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施
をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、
関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
ここで実務上2点問題になりやすいのですが、
①税務調査の初めに身分証を見るのを忘れた場合
身分証は「いつ請求・提示」しなければならないとの
規定はないため、税務調査の間であれば当然に、
いつでも提示請求をすることができますし、
調査官は調査のときには常に携帯義務があります。
②提示請求をしたところ身分証を忘れたと言われた場合
たまに存在するのがこのケースです。
上記条文のとおり、調査官には身分証明書を「携帯する義務」
がありますので、その義務に反しているということで、
この場合、税務調査を受ける必要はありません。
ただ、その日を断ってもまた別の日に税務調査に
なるだけでしょうから、実務上は
身分証明書を携帯していなかったという事実だけを
握ったまま、税務調査を受けることになるでしょう。
「ニセ税理士」ならぬ「ニセ調査官」というのは
聞いたことがありませんが、税務調査の入口で
きちんと対応することで、調査官は
「この税理士わかっているな」と思い、
ムリムチャな要求をしにくくなるものなのです。
税務調査は入口から始まっています。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2012年7月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。