返品を利用した脱税
今回のテーマは、『返品を利用した脱税』です。
納税者は、日頃は経営に忙しくて税金のことまで頭が回りません。
ところが期末になると税金の金額に大変驚きます。
「折角、汗水流して働いたお金が、こんなに税金でもっていかれるのか…」
と理不尽に感じる方も少なくないでしょうね。
その時になって、はじめて節税策を講じるわけです。
その場しのぎの策ですから、税理士の先生もご存じない話も多く
発覚した時には既に後の祭りです。
税務調査の否認事項も大半は期末の経理処理によるものです。
慌てて講じた策だから、矛盾点がたくさん出てきてしまうのです。
かつて、このような脱税の手口がありました。
以前の更新で「棚卸除外」ついて書きましたが
今回は「仕入れたモノを返品する」というケースです。
仕入れの取引が成立し、支払が済んだ後に仕入れたモノを返品します。
返品したわけですから、当然、お金は戻ってきます。
しかし、返品した時の伝票は帳簿類に記載せず
仕入れたときの取引だけを経費で計上するといった手口です。
このケースは、帳簿上には全く不備がありません。
返品された部分の金額は、まるまる懐に入ってしまいます。
請求書、領収書、納品伝票とすべてが揃っているわけですから
このカラクリを簡単に見破ることはできません。
では、どうやって突き止めたと思いますか?
納品業者が返品を受けた場合、通称『赤伝』と呼ぶ返品専用の伝票があります。
この伝票は、納品業者には必ず残っています。
自社の証拠は隠滅できても、納品業者はそうはいきません。
取引業者へしらみつぶしに反面調査をかければ、すぐにでも発覚します。
また別な手口としては、仕入れた品を別業者に転売するといった方法です。
転売した売上金は簿外にして、裏金としてストックしていました。
この脱税方法も過去には頻繁に行われていました。
仕入としてではなく、経費として計上するケースもありました。
例えば、商品券やプリペードカードなどを大量に購入します。
実際にその一部はノベルティーとしてプレゼントなどに使われていました。
帳簿を確認すると購入枚数だけが異常に目立ちます。
しかし、それが誰に何枚渡されたのか、すべてを確認することはできません。
そこで「プレゼントした」と言われる顧客名簿と照合作業を繰り返し、
配布されたであろう予測枚数を割り出します。
次に、近隣の金券ショップにからの資料を集め、この企業からの転売がなかったか
調査を進めていくうちに、1軒のショップから転売の事実が発覚しました。
ノベルティーとして使われていた枚数はごくわずかで
転売された金額は、すべてオーナーの遊行費に充てられていました。
税理士の先生も知らないところで行われており
まさに寝耳に水といった表情でした。
調査官は、帳簿の数字だけを全面的に信用してはいません。
幾多の脱税を見てきているわけですから、その場しのぎで逃げ切れるほど
調査官の目は節穴ではありません。
※2010年4月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
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