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2019.09.24

追徴税額の減額にかかる交換条件を受けるべきか?

※2018年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査の最盛期だからこそ、あえて
標題の件について解説させていただきます。
この質問は、直近の2ヶ月間で3件受けています。

税務調査で調査官から、下記のような
【交換条件】の提示を受けることがあります。
(金額については、あくまでも例示です)

【前提】
〇税務調査に数日入ったうえで否認指摘などが
出そろっている状況

〇調査官の否認指摘をそのまま全て受け入れると
本税の額は300万円になる

〇否認指摘のうち一部に関しては反論しているが、
グレーゾーンであることは間違いない

【調査官が提示した条件】
〇重加算税を受け入れるのであれば
本税を300万円から200万円に減額する
(一部の否認指摘を取り下げる)

〇重加算税を賦課し本税を下げる場合は、
質問応答記録書に署名・押印してもらう

さて、この調査事案における税額だけで
損得を計算してみましょう
(延滞税の計算はあえて除外します)。

300万円の本税+過少申告加算税
= 330万円(1.1倍)
(加重分がない場合で単純化しています)

200万円の本税+重加算税
= 270万円(1.35倍)

重加算税を受け入れた場合、延滞税が
高くなるとはいえ、ざっくり計算でも
約60万円ほど追徴税額が下がります。

さて、ここで考えるべき要因は単純に、
重加算税を賦課されると以後の調査に
選定されやすくなる、という事実から、

「以後税務調査に入られやすくなっても
目の前の追徴税額が下がる方がいい」

もしくは

「税務調査が入る頻度が増えるくらいなら
重加算税を受け入れず高い追徴税額を払う」

のどちらかの選択ということです。

ただし、この交換条件の裏側を読むと、
調査官が「質問応答記録書を提出してくれ」
と言っている時点で、調査官は
重加算税の賦課要件を満たしているのか
自信がないとも考えられます。

重加算税賦課に該当するのかについては、
個別性が高い問題なのでここでは
あえて議論の対象から外しますが、
まず本当に重加算税の対象になるのか、
前提としてその判断は必要となります。

さて、このような相談事案があった場合、
私の基本的なスタンスは、「顧問先が
選択した方でいい」というものです。
あくまでも、判断するのは顧問先自身です。

問題なのは、税理士が顧問先に正しい情報を
伝えずに、安易に判断させてしまうことです。

今回のケースでいえば、「確かに税務署の
言う通りにすれば追徴税額は下がりますが、
重加算税を受け入れると、以後税務調査に
入られやすくなりますけど、いいですか?」
と以後の問題点も指摘しておくことです。

ましてや、質問応答記録書には
「仮装・隠ぺい」に該当する言葉が入る
ことになるでしょうから、余計です。

顧問先には税務とは別に、資金繰りの問題も
ありますし、社長の考えもあるでしょう。

ですから、税務調査の問題を税務調査だけで
判断する・できるわけではありません。

しかし、顧問税理士だからこそ、
税務調査の観点から将来にわたる
注意喚起だけは必要になります。

このような交換条件が提示されることは
よくありますので、ぜひ注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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