退職した社員を被保険者とする生命保険の損金性(その2)
※2018年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「退職した社員を被保険者とする生命保険の損金性(その2)」ですが、
平成14年6月10日の裁決をご紹介します。
この事例でもタイトルにある通り、
退職した社員を被保険者とする生命保険を解約していませんでした。
ちなみに、本事例では退職した翌期に解約していました。
生命保険そのものに関しては、他の論点もあったのですが、
ここでは割愛し、この論点だけに絞ってまとめます。
そこで、原処分庁は下記の理由から「福利厚生目的ではない」と
主張しました。
理由の中から、解約に関する部分のみをピックアップします。
請求人は、平成10年12月期において本件がん保険契約に基づく
被保険者の一部の者が退職しているにもかかわらず、
当該事業年度中に解約の手続をとっていない。
これに対して、請求人は下記と主張しました。
本件被保険者の一部の者が退職しているにもかかわらず、
解約の手続をとっていないことについては、途中解約のメリットがなく、
解約しないほうがその間の保証もあることから解約しなかったものである。
そして、国税不服審判所はこの論点に関しては、
下記と判断したのです。
なお、現在の保険会社の取扱いは当時とは変わり、
未経過保険料に関しては返金されることにご注意ください。
もちろん、この変更によって、本裁決の判断が変わるものではないと
考えます。
〇認定事実
本件各生命保険契約は、年の途中で解約しても支払保険料の
未経過分については払戻しがなく、解約返戻金の単純返戻率については
契約年数の経過に伴い増加するものである。
〇上記の認定事実のとおり翌事業年度においてその手続を取る方が
解約メリットが多いことから途中での解約をしなかったものと
推認されるところ、これをもって従業員等の福利厚生目的ではない
ということはできない。
いかがでしょうか?
解約返戻率を考えての意図的な行為なのか、
単なる失念なのかはともかく、
退職社員を被保険者にした生命保険の解約を失念していることはあります。
他の事実関係次第という論点もありますが、
お客様で同様のことが起きた場合のために、
本裁決を覚えておいてください。
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