退職した社員を被保険者とする生命保険の損金性(その3)
※2018年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「退職した社員を被保険者とする生命保険の損金性(その3)」ですが、
平成6年6月13日の裁決をご紹介します。
今回でこのテーマは最後となります。
この事例は歯科医(個人事業主)が契約した養老保険で、
下記の状況となっていました。
〇 保険期間:10年
〇 被保険者:本人、専従者2名及び従業員等10名の合計13名
〇 保険金総額:3億8,000万円
〇 年間保険料合計:30,540,560円
この状況において、
〇 契約日以降新規に採用した従業員についての加入手続
〇 契約日以降退職した従業員についての解約手続
がされていませんでした。
そして、国税不服審判所は下記と判断したのでした。
請求人及び専従者を除く10名の被保険者の内の7名の退職者及び
3名の新規採用者についての各手続が、その退職または採用の日から
数か月を経た本件保険契約の解約日に至るまで、
いずれも行われていなかったことは、単に管理上の問題とは認められず、
~本件保険契約が従業員の福利厚生を目的としたものとは認められない
理由の一つになると認められる。
この事例は「本件保険契約の被保険者の数は、請求人及びその家族を除くと
10名であるが、この内9名は、保険への加入の事実を全く知らず、
加入に際して実施された健康診断及び告知書ヘの押印についても、
本件保険契約のために行われたとの認識は全くなかったこと、
また1名は、加入の事実は知っていたが具体的な内容は知らなかったこと。」
という事実関係も大きいので、退職者分だけを取り上げて議論することは
ナンセンスかと思いますが、このような事例もあるのです。
いかがでしょうか?
理由は様々でしょうが、退職した社員を被保険者とする生命保険契約が
解約されていないケースは間々あるかと考えます。
税理士もここまでは管理できないケースが多いでしょう。
結果、税務調査で問題になって初めて、
税理士がその事実に気付くこともあり得ますが、
その場合は、3週に渡って書いてきた裁決事例を参考に判断する必要が
あるのです。
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