退職手当金等、弔慰金と純資産価額
※2015年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「退職手当金等、弔慰金と純資産価額」ですが、
平成16年4月22日の裁決を取り上げます。
被相続人の相続財産に同族会社の株式があり、当該会社から退職手当金等が
支給されている場合、相続税法第3条第1項2号によって相続または遺贈に
より取得したものとみなされます。
そして、相続人と会社への二重課税を避けるため、当該株式の純資産価額を
計算する上で、直前期末において未払いであっても、負債として加味する
ことになっています。
では、弔慰金はどうでしょうか?
弔慰金は負債に計上できないというのが結論ですが、これについて
争われたのが上記裁決です。
国税不服審判所は下記と判断しています。
○退職手当金等と弔慰金は、相続税法基本通達3-18ないし3-23の定めに
より区分されているが、この区分については、実質的かつ合理的に区分
されており、当審判所においても相当と認める。
○ところで、取引相場のない株式の課税時期における1株当たりの純資産価額
の計算を行う場合、退職手当金等も弔慰金も、課税時期、すなわち相続
開始時において確定している債務ではないから、本来、評価会社の純資産
価額を算定するについての負債とはならないものである。
○しかしながら、退職手当金等については、相続税法第3条第1項第2号の規定
により相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に
算入されて相続財産として課税されるため、評価会社の純資産価額の計算
において負債に計上しなければ、相続税において実質上の二重課税が
生じることになり、このような二重課税を防止するために、退職手当金等
を負債として計上する必要があり、財産評価基本通達186において、負債に
含まれるものとして取り扱われているものであり、この取り扱いは
当審判所においても相当と認める。
○これに対して、相続税法基本通達3-18ないし3-23の区分により弔慰金と
されたものについては、退職手当金等と異なり相続財産とはみなされず、
実質上の二重課税とはならないので、弔慰金を負債に計上する必要はない。
○したがって、弔慰金を負債に計上することはできないと解するのが相当
である。
○以上に照らして本件を検討するに、C社から弔慰金として支給を受けた
64,800,000円は、全額が相続税法基本通達3-20に該当する弔慰金と
認められ、請求人らも弔慰金を相続により取得した財産に含めていない
のであるから、C社の株式の評価に当たり、この金額を負債に計上する
ことはできない。
○請求人らは、株式の評価に当たり弔慰金を負債に計上しないと、弔慰金の
給付を非課税としている労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠く旨
主張する。
○しかしながら、これらの法律の非課税の規定は、保険給付等のそれぞれの
法律が規定する支給を受けた金品が、労働災害等により労働者、遺族等の
被った損失を補てんし、その保護を図るために必要なものであることから、
当該給付に対して租税その他の公課を課することはできないとしている
ものである。
○本件においては、弔慰金そのものを課税の対象としたものではなく、
課税の対象となる株式の評価に当たり弔慰金に相当する金額を考慮して
(相続する株式の価値を減少させて)算定するか否かという相続財産の
評価の問題であるから、弔慰金を負債に計上せずに株式を評価することは、
労働者災害補償保険法等の法規との均衡を欠くものとはいえず、この点に
関する請求人らの主張には理由がない。
退職手当金等と弔慰金は近い性質があるとはいえ、二重課税の防止という
趣旨から弔慰金は外れるため、負債計上はできません。
これらは同時期に決議され、同日に支払われることも多いでしょうが、
負債計上の可否に関しては十分にご注意ください。
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