過大役員退職給与が1年当たり平均額法で判断されるケース
※2017年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「過大役員退職給与が1年当たり平均額法で判断されるケース」
ですが、複数の裁決、判決を取り上げます。
役員退職給与が過大かどうかが争われた事例を検証すると、
結果として「1年当たり平均額法」で判断されている場合があります。
ただし、この計算方法が功績倍率法に先立って判断されることはありません。
具体的に言うと、「平均功績倍率法を補完する方法として、
同役員の最終報酬月額が在職期間中の功績を反映しておらず、
不相当に低額であると認められる場合」に適用されます。
これは平成18年3月22日裁決で示された考え方です。
そこで、功績倍率法を採用する前提であれば、「最終報酬月額」が
いくらであるのか?ということが重要になってきますが、
事前確定届出給与を利用し、社会保険料削減のため、または、
老齢年金の増額至急のため、月額報酬を意図的に低額にしている場合が
あります。
これが争点になったのが、平成27年6月23日裁決です。
この事例で請求人は「会社法は、役員賞与を役員報酬の1つとして
位置付けているのであるから、本件代表取締役に対する退職給与として
相当であると認められる金額を平均功績倍率法により算定する際の
最終報酬月額は、賞与を加味して算定するべきである。」と主張しました。
参考(会社法361条、取締役の報酬等)
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける
財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての
次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の
決議によって定める。(以下、略)
しかし、国税不服審判所は下記と判断したのです。
〇最終報酬月額は、通常、当該退職役員の在職期間中における報酬の
最高額を示すものであるとともに、退職の直前に大幅に引き下げられた
などの特段の事情がある場合を除き、当該退職役員の在職期間中における
法人に対する功績の程度を最もよく反映している。
〇本件事業年度において、役員に対する事前確定届出給与(賞与)の
支払はないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
いかがでしょうか?
もちろん、「功績倍率法による計算>1年当たり平均額法による計算」と
なる訳ではありません。
結果として、逆になるケースもあります。
ただし、それは結果論であり、1年当たり平均額法は税理士が入手できる
データからではなかなか適正に計算できないのが実情です。
だからこそ、功績倍率法で計算するために、最終報酬「月額」を
適正にしておく必要があるのです。
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