過少申告加算税が課されない場合①
今回のテーマは、『過少申告加算税が課されない場合①』です。
先日ある税理士から過少申告加算税に関する質問を受けました。
重加算税に関しては、いつもメルマガでは取り上げていますが、
確かに過少申告加算税については書いたことがありませんでした。
今回と次回の2回にわたり、過少申告加算税が
「課されない要件」について書きたいと思います。
さて過少申告加算税が課されないケースは2つあります。
(1)更正を予知しないで修正申告をした場合
(国税通則法第65条第5項)
(2)正当な理由がある場合
(国税通則法第65条第4項)
今回は(1)について書いていきます。
「更正を予知しないで修正申告をした場合」に
過少申告加算税が課されないのは、
「自発的に修正申告を決意し、修正申告書を提出した者に対しては
例外的に加算税を賦課しないこととし、もって納税者の自発的な
修正申告書を歓迎し、これを奨励することを目的としたもの」
(東京地裁昭和56年7月16日)です。
では具体的に「予知してされたもの」とは
どのような行為が該当するのでしょうか?
「予知してされたもの」とは、納税者に対する当該国税に関する
「実地または呼出等の具体的調査がされた後」
にされた修正申告を指します。
※調査の範囲が「呼出」を含んでいる広い範囲であることに注意
「予知してされたもの」かどうかに関して有名な裁決があります。
「更正があるべきことを予知してなされた申告ではない
として過少申告加算税を取り消した事例」(昭和57年3月26日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0602030000.html
調査官が電話で調査日時の取決めをした後、修正申告書を提出し、
その2日後に税務調査があった場合は、
「更正があるべきことを予知して」された
修正申告ではないと判断された裁決です。
つまりこの場合、過少申告加算税は課されません。
「予知してされたもの」かどうかはかなり微妙な判断を伴いますが、
あくまでも原則は、税務職員(調査官+内部事務)が
申告に関する調査に着手して、その申告が不適切であることを
発見するに足りるか、あるいはその端緒となる資料を発見し、
これによりその後調査が進行し更正に至るであろうということが、
客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達した後に
なされた修正申告は「予知してされたもの」なのです。
(東京高裁昭和61年6月23日)
ですから、申告書の内容に関して具体的に誤りを指摘
(調査でもなく電話の時点でも)され、
修正申告を促されれば過少申告加算税は免れにくいです。
しかし、申告書の内容に関して税務署から、
明確な誤りの指摘ではなく、ただの問い合わせ
(特に1部門などの内部事務部門)があり、
間違いに気付いて自ら修正申告を提出すれば
過少申告加算税は課されない可能性が高いのが現実です。
こんな場合でも、税理士自ら「加算税はあとで通知が来ますよね?」
などと言ってしまうので、税務署も本当課すつもりがなかった
過少申告加算税を賦課することが往々にしてあります。
自主修正なのか、税務署の具体的指摘による修正なのかに
よって過少申告加算税は変わるので注意してください。
※2011年5月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。
また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。