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2015.11.24

過少申告加算税と更正の予知

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「過少申告加算税と更正の予知」です。

税務調査の連絡があり、事前に過去の取引等をチェックした結果、

重大なミスが発見され、否認指摘される前に修正申告する場合があります。

この場合、基本的には過少申告加算税は課されない訳ですが、この理屈を

過去の裁決、判決を挙げながら、整理してみたいと思います。

まず、国税通則法65条(過少申告加算税)第5項では「第一項の規定は、

修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、その申告に係る国税

についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを

予知してされたものでないときは、適用しない」とあります。

また、事務運営指針でも「臨場のための日時の連絡を行った段階で

修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを

予知してされたもの」に該当しない」とされています。

だから、更正があるべきことを予知していない修正申告の場合、

過少申告加算税は課されない訳です。

では、この「更正があるべきことを予知して」とはどういう基準で

考えればいいのでしょうか?

学説には諸説ありますが、それをここで論じるつもりはないので、

過去の裁決や判決を税理士がどう活用していくかという点から解説します。

○ 昭和57年3月26日 裁決(更正があるべきことを予知してなされた

申告ではないとして過少申告加算税を取り消した事例)

国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきことを予知して」とは、

課税庁が当該納税申告書に疑惑を抱き、調査の必要を認めて、現実に納税者

に対する質問、帳簿調査等の実地調査又は呼出調査等により当該申告が適正

でないことを把握するに至ったことを前提として、納税者が修正申告書を

提出する時点で更正のあることを察知していたことを指すものと解すべき

であるところ、本件においては、原処分庁の調査担当者が電話で調査日時の

取決めをした日後2日を経過して修正申告書の提出があり、更に2日を経過

した後に調査があった事実などからみて、請求人は、本件修正申告書を提出

する時点で、原処分庁がその調査によって請求人の当初の申告が適正でない

ことを既に把握していたことを察知していたと認めることはできないから、

本件修正申告は、国税通則法第65条第3項に規定する「更正があるべきこと

を予知して」なされた申告ではない。

http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0602030000.html

この事例では修正申告書を提出した2日後に税務調査があった訳ですが、

過少申告加算税は課されなかった訳です。

○ 平成24年9月25日 東京地裁

原告は、本件調査担当者において本件確定申告書における申告が不適正

であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し、

これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存すること

が発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性を

もって認められる段階に達する前に、自発的に修正申告を決意し本件修正

申告書を提出したものであると認められるから、本件修正申告書の提出は

「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について

更正があるべきことを予知してされたものでない」というべきである。

この事例では7/21~8/21に行なわれた税務調査につき、初日の朝に

増加償却の特例を適用するための届出書を失念していたことに気づき、

7/28に修正申告書を提出した事例です。

また、この内容につき、「本件調査担当者が減価償却計算の適否に係る調査

を行っていたとしても、本件修正申告書が提出された時点では、本件届出書

の不提出が発見されるであろうことが客観的に相当程度確実であったとは

認められないから、いわゆる客観的確実時期には達していなかったものと

いうべきである」とも判示しています。

その他の事例では大阪高裁(平成12年11月17日)などもあり、

納税者の主張が認められています。

ただし、1点だけ注意すべき点があります。

それは東京高裁(昭和61年6月23日)で「修正申告書の提出が更正が

あるべきことを予知してされたものでないときに例外的に加算税を賦課

しないこととした国税通則法65条3項の趣旨からすれば調査により更正が

あるべきことを予知して修正申告がされたものでないことの主張・立証責任

は納税者にあるというべきである」と判示されている点です。

つまり、更正があるべきことを予知していないことの立証責任は納税者に

あるとされているのです。

ここが実際の現場でどの程度までの論点になるかは別問題ですが、「更正が

あるべきことを予知して」とは内心的な要素でもあり、客観的事実で証明

することは難しい場合も多いのではないでしょうか?

いかがでしょうか?

いずれにせよ、税務調査前に「大きな論点」が発見された場合は納税者と

相談の上、事前に修正申告書を出しておいた方が賢明でしょう。

また、税務調査の途中でも具体的な指摘を受けていないならば、

修正申告をした方がいいケースもあるでしょう。

税務調査の臨場前にこれらの論点が分かっている場合もあるので、ご注意

頂ければと思います。

特に、過少申告加算税だけでも多額になる場合もありますので・・・。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2014年1月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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