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2015.09.18

過年度の支払利息の計上時期

今回から3回に渡り、「過年度の処理、後発事象、前期損益修正損益、

更正の請求(更正の申出)」について、解説していきます。

税理士の感覚からすれば「それはそうだろう」と思う部分も

あるかもしれませんが、これを理論的に考えてみたいと思います。

さて、今回は「過年度の支払利息の計上時期」です。

まずは、事案(昭和62年12月24日裁決)の概要です。

○請求人A社は電気部品製造業を営む同族会社

○経営不振のため、関係会社のB社から借入れした

○借入期間、利率、返済方法等につき、文書による契約はない

○B社からは毎月、利息の請求書が届いていたが、A社は支払えなかった

○B社は請求額を毎月末で未収計上したが、A社は未払計上しなかった

○昭和48年12月1日~昭和53年5月31日までの利息で、

 A社が未収計上していたものを昭和60年5月31日までに支払う旨の

 覚書あり

○この覚書に従い、昭和59年5月期、昭和60年5月期に実際に支払い、

 A社はその支払い時に損金算入した

○A社は「覚書は民法513条に規定する更改契約であり、本件支払利息の

 支払義務は新たに発生」と主張

○支払利息の損金算入時期は発生事業年度か、支払った事業年度かが争点 

   
参考(民法513条(更改))

当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、
更改によって消滅する。

2 条件付債務を無条件債務としたとき、無条件債務に条件を付したとき、
又は債務の条件を変更したときは、いずれも債務の要素を変更したものとみなす。

この前提の中、国税不服審判所は下記と判断しました。

○費用は債務確定基準が公正妥当と認められる会計処理の基準

○支払利息の損金算入時期は会社の業績等の諸条件を理由に会社の任意に

 委ねられているものではなく、債務確定した事業年度である

○本件支払利息を支払った事業年度で損金算入することはできない

○本件覚書は利息の支払期日を両社で確認したことにすぎず、債務の要素に

 変更があったと解することはできず、更改契約とみることはできないため、

 新たに発生した要素とはいえない

この判断は税務の立場からいえば、極めて当然の話ではありますが、

一方、企業会計の立場からいえば、過年度の損益計算に過不足があった場合、

それは「前期損益修正損益」として修正することになっています。

しかし、法人税は各事業年度ごとの課税所得を独立して計算し、

前期以前の益金損金は当期の課税所得に影響させないのが原則です。

結果として、企業会計上は前期損益修正損益と処理した項目であっても

税務上は過年度の益金損金となるのです。

他の同様の裁判でも「実際に支払った際の損金にはできない」と

されたものがあります(秋田地裁、昭和61年5月23日)。

だから、過年度の支払利息の計上がもれていた場合は、

更正の請求、または、更正の申出により過去の損金の修正をするしか

ないのです。

支払利息に限りませんが、過去に計上すべき損金が計上されていないことは

よくあります。

もちろん、更正の請求等により救済できるならいいのですが、

場合によっては損金に算入すべき時期を逸し、減額更正の除斥期間を

徒過していることもあります。

昨年のブログでも貸倒損失の計上時期を逸した後に

貸倒処理したものにつき、否認された事例をご紹介しました(平成20年

6月26日裁決)。

決算の際に内訳書、減価償却資産の明細等も含め、社長が細かくは

チェックしていないことはよくあります。

これが原因で過年度の損金に計上すべきものが残ったままになっていること

もあります。

ご注意頂ければと思います。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

2013年8月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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