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2015.09.25

過年度の電気料金の過払いの修正時期

こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。

前回から3回に渡り、「過年度の処理、後発事象、前期損益修正損益、

更正の請求(更正の申出)」について解説していますが、今回は2回目です。

税理士の感覚からすれば「それはそうだろう」と思う部分も

あるかもしれませんが、これを理論的に考えてみたいと思います。

さて、今回は「過年度の電気料金の過払いの修正時期」で、

昭和62年12月6日裁決(→平成4年10月29日最高裁)の事例です。

まずは、事案の概要です。

○ 昭和47年4月分から昭和59年10月分まで電力会社の瑕疵により、

  A社は電気料金の過払い状態にあった

○ 昭和60年3月1日に電力会社と確認書を交わし、A社は2億円を受領

○ 受領した2億円のうち、電気料金、契約超過違約金、電気税の合計額

  1億5,000万円のうち、昭和55年1月1日~昭和59年12月

  31日の各期(5期)に対応する9,000万円は損金の額を修正し、

  修正申告した

○ 2億円のうち利息5,000万円は昭和60年12月期の益金とした

○ 納税者は「過年度の損金が過大なので、前各事業年度の損金を修正

  すべきである」と主張

○ 過年度の損金を修正すべきか、返還を受けた事業年度に益金として

  計上すべきかが争点

なぜ、A社がこのように主張したかというと、修正申告した事業年度前の

事業年度については、更正決定の除斥期間(国通法70)、国税の徴収権の

時効(国通法72)により、新たな課税ができないからです。

また、A社は「民法第703条に規定する不当利得の返還金なので、

過大な電気料金の支払いの都度、過大分については不当利得として、

その返還を求める権利を取得し、かつ、過払額は客観的に確定していた

ものであるから、本件事業年度の益金の額に算入すべきものではなく、

過大な電気料金の支払いをした前各事業年度の益金の額にそれぞれ

算入すべき」とも主張しました。

(参考)民法703条(不当利得の返還義務)

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために

他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、

その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

これに対し、国税不服審判所は下記と判断しました。

○ 後発的事由により生じた損益を既往の事業年度に遡り修正すべきでない

○ 既往の事業年度の損金の額に算入した電気料金等が過払いであることが

  判明し、かつ、その過払額の返還を受けるべきことが確定したような

  場合には、後発的事由が生じた場合として、その過払額の返還を受ける

  べきことが確定した日の属する事業年度の特別損益として処理すべき

なお、ご参考までに、下記の法人税基本通達(前期損益修正)もあります。

2-2-16 当該事業年度前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度

に該当する場合には、当該連結事業年度)においてその収益の額を益金の額

に算入した資産の販売又は譲渡、役務の提供その他の取引について当該事業

年度において契約の解除又は取消し、値引き、返品等の事実が生じた場合でも、

これらの事実に基づいて生じた損失の額は、当該事業年度の損金の額に算入

するのであるから留意する。

なお、この通達の考え方は裁判所(福岡高裁、昭和60年4月24日)

の考え方としても確立されています

ただし、最高裁の少数意見として「既往の事業年度の所得を修正すべき

であり、A社の主張を認容すべきである」というものもあります。

いかがでしょうか?

この事例は税理士の感覚からすれば、当然の結果と感じるかもしれませんが、

民法703条(不当利得の返還義務)と国税通則法70条、72条とを

関係させた事例として興味深い側面もあります。

この事例そのものは特殊ではありますが、別の事例の際に応用できるかも

しれないので、覚えておいて頂ければと思います。

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2013年8月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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