遺産分割と小規模宅地等の特例の関係
※2023年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「遺産分割と小規模宅地等の特例の関係」です。
ここ数回、相続対策の3本柱として
1.争続対策
2.納税資金対策・分割調整資金対策
3.節税対策
をご紹介してきました。
相続対策では、
3つのバランスを重視する必要があることを
何度も確認しています。
今回は、この視点から
小規模宅地等の特例を検証していきます。
小規模宅地等の特例(措法69の4)は
税理士にとっては馴染みの深いというよりは
相続税申告実務では必須の特例という
立ち位置となる重要な特例です。
要件の1つに分割確定要件があります
(措法69の4(4))。
つまり・・・
相続税の申告期限までに遺産分割を完了し、
申告書を提出する必要があるということです。
税理士であれば・・・
(1)期限後申告での適用可
(2)未分割申告+3年内分割見込書
(3)未分割申告+3年内分割見込書
+やむを得ない事由の承認申請書
など、遺産分割と小規模宅地等の特例に関する
論点は数多く思い浮かぶかと思います。
これらの論点は相続対策3本柱のうち
3.節税対策
の観点からの視座に基づくものになります。
遺産分割を要件に求めるものである以上、
遺産分割をまとめなければ要件が成立しません。
遺産分割をまとめる調整弁になるのは
最終的には資金が必要ということは
何度かお伝えしてきました。
また、特定財産承継遺言があったとしても
最終的には遺留分侵害額請求の対象となり
資金で調整することに落ち着きます。
これが・・・
2.納税資金対策・分割調整資金対策
のうち、「分割調整資金対策」という側面です。
ここでは、遺言がない前提で考えてみます。
そうすると・・・
小規模宅地等の特例を適用するためには
遺産分割協議を成立させることが
必要となります。
民法上、遺産分割協議は
遺産分割協議時点での時価評価に基づき
行われることが原則です。
例えば・・・
10億円で購入した都心の一棟マンションの
相続税評価額(貸家+貸家建付地)が3億円
であっても、遺産分割協議は時価10億円*
がベースとなります。
また、貸家建付地につき、小規模宅地等の特例
(貸付事業用宅地等)を適用させたとしても
遺産分割協議は時価10億円*をベースに行う
ことが必要となります。
*購入時と相続発生時に時価は同じと仮定
上記は極端なケースであったかもしれませんが
・相続税評価額と時価が乖離しているケース
・小規模宅地等の特例を適用しているケース
では、遺産分割協議の原則となる時価と
大きく乖離する可能性があります。
その場合、小規模宅地等の特例適用にあたり
遺産分割協議を成立するためには、
少なくとも分割調整資金としての
「代償金」の存在が必要になります。
その財源としては、受取人固有の財産である
生命保険金(個人契約)を多いに活用すべき
と考えます。
小規模宅地等の特例を
3.節税対策
として用いるためには
2.分割調整資金対策
が必要となるという視点も
今後は必要になると考えます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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