遺産分割の提案と代償金のリスク
※2016年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「遺産分割の提案と代償金のリスク」ですが、
東京地裁判決(平成11年2月25日)を取り上げます。
相続税の申告をする場合、税理士が遺産分割の内容に関わることは
よくあります。
そして、生命保険金を原資として代償金を支払うこともよくありますが、
この場合に注意しなければならない点があるのです。
それは「代償金を支払う人が相続した積極財産の額 < 代償金の額」
とならないように提案をしなければならないということです。
最高裁判決(昭和48年6月29日)でも示されている通り、
生命保険金は「受取人固有の財産」であり、「遺産」ではありません。
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保険金受取人を相続人と指定した保険契約は、特段の事情のないかぎり、
被保険者死亡の時におけるその相続人たるべき者のための契約であり、
その保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人たるべき者の
固有財産となり、被保険者の遺産から離脱したものと解すべきであることは、
当裁判所の判例(昭和三六年(オ)第一〇二八号、同四〇年二月二日第三
小法廷判決・民集第一九巻第一号一頁)とするところであるから、
本件保険契約についても、保険金請求権は、被保険者の相続人である
被上告人らの固有財産に属するものといわなければならない。
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その受取人固有の財産を、相続した積極財産の額を超えて
代償金として交付した場合、その差額は贈与になってしまうのです。
実際、東京地裁判決(平成11年2月25日)では下記とされています。
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代償債務のうち、〜積極財産の額を超える部分は、現物をもってする分割に
代える代償債務には該当せず、〜新たに経済的利益を無償にて移転する
趣旨でされたものというべきであり、〜積極財産を超える部分については、
〜相続税の課税価格の算定に当たって、消極財産として控除すべきもの
ではなく、〜取得した代償債権の額は〜贈与により取得したものというべき。
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例えば、相続人A、相続人B、相続人Cがいたとします。
そして、下記状況で相続したとします。
A:生命保険金7,000万円(ここからCに代償金2,000万円を支払う)
B:不動産5,000万円
C:不動産3,000万円、Aからの代償金2,000万円
この場合、Aは相続した積極財産の額が0円なので、
積極財産の額を超える額は2,000万円となり、AがCに2,000万円を
贈与したことになってしまうのです。
仮に、Aが何らかの財産500万円を相続していれば、
贈与税の対象になる金額は1,500万円となります。
遺留分の減殺請求に備えるため、生命保険金の受取人を相続人1人に
集中させてあることもあります。
しかし、相続した積極財産の額を超えて代償金を支払うと、
それは「贈与」になってしまいます。
そのため、遺産分割の相談を受けた際はこの点に注意をすべきなのです。
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