還付税額が少額でも更正の請求をすべきなのか?
※2021年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
申告業務を行っていると、過去申告の誤りに気付く場合も
多いわけですが、今回は誤りが軽微であって、還付税額が
少額であっても更正の請求をすべきか、解説していきます。
まず、私がよく受ける質問として「更正の請求をしたら
税務署から追加資料の提出を求められたのですが、これに
応じなければならないのでしょうか?」というものがあります。
これは、更正の請求の期間が5年に延びたことによって、
平成24年2月2日以後に提出する更正の請求において、
「事実を証明する書類」の添付が義務化されたことに
ともなって提出を求められるものです。
(国税通則法第23条第3項・施行令第6条第2項)
https://mmct.jcity.com/?c=16983&e=OpM%3BoNTSMIxtsexwdsj5fw11
これは、消費税等の還付請求と同じように、
求められる書類等が年々厳しくなっています。
先日あった実際の質問でも、法人で数千円の借入利息
計上漏れを更正の請求したところ、税務署から
「通帳のコピー」と「別表四・五」の追加提出を
求められたという事案がありました。
還付税額が数百円にもかかわらずです。
更正の請求に添付義務がある「事実を証明する書類」
の範囲は明確ではなく、その申告内容等によるものの、
更正の請求は納税者側に立証責任があり、かつ
求められた資料を提出しない限り、更正の請求が通らない
(還付されない)ことから、結局は税務署の
求めに応じざるを得ないでしょう。
では、還付税額が少額であるにもかかわらず、
更正の請求をした方がいいのでしょうか?
まず上記の通り、更正の請求をするにあたっては、
手続きの労力と還付税額、さらには税理士の立場では
その報酬と割に合わないという現実があります。
法人・個人事業主など顧問・関与先も、
数百・数千円のために追加で資料等を求められるという
労力負担が生じるケースも多いわけです。
さらには、顧問・関与先の現実的な不利益として、
更正の請求を起因として税務調査に入られる
可能性が高まる、という問題もあります。
更正の請求を提出すると、税務署内では
過去の申告を精査することになること、さらには
添付・提出された書類から把握できる情報も
追加されることから、還付する前に
税務調査に切り替えようという誘因になり得ます。
税務署内では、一般的な調査選定に加えて、
更正の請求の処理事案などから都度、調査事案を
選定・処理を切り替えしています。
あくまでも「少額の」更正の請求という話ですが、
顧問・関与先には、
・提出資料などの労力がかかること
・税務調査に切り替わるリスクがあること
の2点を事前に説明したうえで、本当に
更正の請求をすべきかどうか、きちんと
判断をしてもらった方がいいでしょう。
「軽微であっても誤りを見つけた以上は更正の請求」
とすると、むしろ顧問・関与先の意向に沿わない
結果を招くケースもあるわけです。
ぜひ、注意してください。
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