重加算税と偽りその他不正の行為
こんにちは。日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「重加算税と偽りその他不正の行為」です。
前回、従業員の不正と損害賠償金の益金計上時期について書きましたが、これとも関連する話です。
重加算税は国税通則法68条、更正決定の期間制限の特例(7年)に関する
「偽りその他不正の行為」は国税通則法70条第4項に記載があります。
まずは条文を確認してみましょう。
○第68条
第65条第1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条
第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の
課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、
又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を
提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、
過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎と
なるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らか
であるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に
基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)
に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合
を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
○第70条
4 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、
若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る
加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等又は偽りその他不正の行為
により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする
納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等
の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)について
の更正(前二項の規定の適用を受ける法人税に係る純損失等の金額に係るもの
を除く。)は、第一項又は前項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正
決定等の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、
することができる。
そして、この第70条第4項により7年間の更正決定がされる場合、
多くのケースでは重加算税がかかります。
しかし、別の条文で定められていることからも分かるように、
「重加算税(隠ぺい、仮装)」と「偽りその他不正の行為」は別の概念です。
ちなみに、偽りその他不正の行為とは、「税額を免れる意図のもとに、
税の賦課徴収を不能又は著しく困難にするような何らかの偽計その他の行為
を伴う不正な行為を行っていることをいうとしている
(最判昭51・11・30税資90・707)」と記載されています。
また、この立証責任は課税庁側にあるとされています(平成14年2月5日の裁決)。
出典:「税務是認判断事例集」(新日本法規、一部修正)
これに関して、注目すべき裁決(平成23年7月6日裁決)があります。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/84/03/
この事案は従業員の不正が税務調査で見つかったのですが、
「当該行為を請求人自身の行為と同視することは相当ではない」
ということで重加算税に関しては納税者が勝っています。
しかし、「偽りその他不正の行為」には該当するとされ、
更正決定の期間制限の特例の対象にはなっています。
この「隠ぺい、仮装」と「偽りその他不正の行為」の範囲が
どう定義されるのかは学説では諸説ありますが、
私は「偽りその他不正の行為 > 隠ぺい、仮装」と考えています。
なぜならば、7年間の否認は受けたが、重加算税の対象ではないという事例はこれだけでなく、他にも存在するからです(アメリカ大使館事件)。
いかがでしょうか?
税務調査で従業員の不正が見つかることは間々あります。
ただし、その際に税理士として交渉すべきことは
益金計上時期は?、本当に重加算税なのか?、否認される期間は何年?
という3つのポイントがあります。
是非、前回の裁決も含め、覚えておいて頂ければと思います。
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※2013年8月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。