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2026.01.22

1321重加算税に反論:仮装・隠蔽行為が具体的にあるのか?

※2024年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週水曜の本メルマガでは連載で「重加算税」について
解説していますが、今回は重加算税の要件である
「隠蔽または仮装」の具体的な定義についてです。

税務調査の最盛期になり、重加算税の質問・相談が
急増しているのですが、その中でよくある質問は
「重加算税と指摘されているのですが反論する方法を
教えてください」というシンプルな内容です。

一方で、このような質問において抜け落ちている論点
として、調査官からなぜ重加算税かという論拠がない
=どの行為を仮装・隠蔽と認定しているのか、
具体的に指摘を受けていない、ということです。

重加算税の課税要件は「不正」ではなく、あくまで
「隠蔽または仮装」ですので、重加算税の指摘を
受けた場合、どの行為が仮装・隠蔽に該当すると
されているのかがわからない限り反論は不可能です。

さて、「隠蔽または仮装」という法律文言に
法令解釈通達は存在しませんので、裁判などで
よく使われる定義を挙げましょう。

「「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは
脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産
あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲すること」
(和歌山地裁昭52年6月23日判決など)

隠蔽とは事実Aがあることを隠す、または無かった
ように装うことを指しますので、一般的には
売上除外・架空仕入・架空経費・棚卸資産の除外・
雑収入の除外などが隠蔽行為に該当します。

また仮装とは事実AをBにするなど、相手方・名義・
金額等を事実と相違するよう装うことを指しますので、
取引上の架空名義の使用・通謀虚偽表示(民法94条1項)

・虚偽答弁などが仮装行為に該当します。

重加算税で重要な論点は、「隠蔽」「仮装」という
【行為自体に着目する】ことで、事実を隠すまたは
事実を曲げるという行為そのものがない場合、
重加算税の指摘に対して反論することが可能です。

売上1,000万円未満で申告していたが、調査において
「売上の過少申告」=売上1,000万円超と判明し、
重加算税が取り消された/賦課されたという
似て非なる公開裁決事例を取り上げます。

まず、重加算税が取り消された公開裁決事例が下記です。
「収支内訳書に虚偽記載があったものの、隠ぺい仮装が
あったとは認められないと判断した事例」
(令和元年6月24日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/115/05/index.html

この裁決事例では「当初から過少申告の意図があった
と認められる」と認定しているものの、具体的な
仮装・隠蔽行為がなかったことから重加算税が
取り消される結果となっています。判断の内容
(争点4)を一部転載します。

「しかしその一方で、本件全証拠等によっても、上記の
各過少申告に至る過程で、請求人が架空名義の請求書を
作成し、架空名義の本件各支払明細書を作成させ、
あるいは、他人名義の預金口座に売上代金を入金させた
というような事実は認められず、本件各支払明細書や
領収証等の取引に関する書類を改ざんし、あるいは
本件売上メモを作成し、又はこれらの書類を意図的に
破棄・隠匿したなどの事実も認められない。

そして、本件妻が、本件各支払明細書や領収証等の
書類の一部(本件従業員に係るもの)を売上金額
及び必要経費の金額の集計計算の基礎から作為的に
除いていたという行為自体についても、上記ハの(ホ)
の認定事実のとおり、請求人が本件各支払明細書や
本件各預金通帳の全てを保存し、本件調査の際には、
当初から売上金額の過少計上の事実を認めつつ、
これらの書類を本件調査担当職員に提示していた
という事情に鑑みると、当該行為をもって真実の
所得解明に困難が伴う状況を作出するための
隠蔽又は仮装の行為と評価することは困難である。
これらのことからすると、上記の各過少申告に至る
過程で、請求人に隠蔽又は仮装と評価すべき
行為があったということはできない。」

もう1つの公開裁決事例は下記です。

「当初から過少申告及び無申告を意図し、その意図を
外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、
その意図に基づき、所得税等については過少申告をし、
消費税等については期限内に確定申告書を
提出しなかったと認定した事例」
(令和2年2月19日裁決)

https://www.kfs.go.jp/service/JP/118/01/index.html

こちらの裁決事例は税務調査の際に帳簿書類の存在を隠し、
事後的に作成した虚偽の帳簿書類を複数回提示したこと
などから、隠蔽・仮装行為の認定が行われています。

裁決事例の前提事実を見ていただければ、どちらも
消費税逃れの悪質な調査事案としては同じなのですが、
重加算税という論点では全く逆の結論になっています。

その違いを比較していただければ学びは多いはずです。

来週の本メルマガでは、重加算税シリーズの最終回で
ここまでの総括として、重加算税に対する
反論方法を体系的にまとめたいと思います。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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