金庫から発見された現金は重加算税なのか?
さて、今回は「金庫から発見された現金は重加算税なのか?」です。
皆さんの顧問先に税務調査があり、
金庫から収益に計上すべき多額の現金(簿外)が発見されたとします。
当然、調査官は「重加算税です」と主張してきます。
しかし、納税者が勝った事例があるのです(平成13年7月9日裁決)。
まずは、この事案の概要です。
○ 審査請求人は土木建築業等を営む法人
○ 生コンの仕入先と仕入割戻金の算定基準につき協議中であった
○ 仕入先が一方的に現金600万円を持参し、仕入割戻金の旨を告げた
○ 請求人は何も言わずに受け取り(請求人の答述)、金庫に保管
○ 請求人は仕入割戻しの金額につき、合意に至っていないと答述
○ 経理処理は何もしていない
○ 税務調査でこの現金が発見され、重加算税とされた
この状況になった場合、重加算税を認めてしまう税理士は多いのでは
ないでしょうか?
具体的な裁決の前に仕入割戻しに関する基本通達を確認します。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_05_02.htm
では、国税不服審判所の裁決です。
○ 請求人と仕入先との間で特別リベートの算定基準についての
契約等がなかったことは明らか
○ 仕入先が現金を手渡した際、仕入割戻しである旨を告げていることから、
その日に仕入先から請求人に仕入割戻しの支払いの通知があったとすべき
○ 請求人は現金を受け取った日の属する事業年度の益金の額に算入すべき
(以下は重加算税について)
○ 国税通則法第68条第1項でいう「事実を隠ぺいする」とは、納税者が
その意思に基づいて、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実を
隠匿し、あるいは脱漏することをいい、また、「事実を仮装する」とは、
納税者がその意思に基づいて、所得、財産あるいは取引上の名義等に
関し、あたかも、それが真実であるかのように装う等、事実をわい曲する
ことをいうと解されている
○ 仕入割戻金として受領した現金につき、その意味を十分に認識しながら
帳簿に計上することなく、別途保管することは通常の場合は重加算税の
賦課要件である事実の隠ぺい又は仮装に当たる
→ あくまでも「通常の場合は」です。
○ 本件は請求人と仕入先との間において仕入割戻しの金額について協議が
整っておらず、請求人は受領した現金が自己に帰属するとの認識は
有していなかったことが認められる
○ 請求人が仕入割戻しの金額が未確定であるから本件現金は預り金に
すぎないと判断して帳簿に計上しなかったのは、単なる誤解に基づく
計上もれ
○ 金庫に現金を保管していた点は、6,000,000円という金額の
大きさからも盗難等の防止のため、事務所内の金庫に保管していたもの
であって、隠匿しようとしたものではない
○ 請求人の行為には無理からぬ点があると認められる
○ 請求人の行為は隠ぺい又は仮装には当たらない(重加算税ではない)
私も税務調査の現場で「重加算税です」と指摘されることがあります。
その度に考えることは
○ 納税者の行為は隠ぺい、仮装に該当するのか?
○ その行為は「意思に基づいて」いるのか?=「故意性」はあるのか?
ということです。
世の中では重加算税の要件を満たしていないにも関わらず、
重加算税が課されている事案が多々あります。
秋は税務調査が多い時期でもありますので、
もし、皆さんがそう指摘されたならば、上記2点から
再度、考えてみてください。
反論材料が見つかることも少なくないと思います。
なお、今回取り上げた事例は私のアマゾンキャンペーンの特典とした
「納税者が勝った!中小企業の社長が知っておくべき厳選事例10」
の中から取り上げたものです。
その他にも納税者が勝った事例をいくつも取り上げていますので、
ご参考になさってください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
2013年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。