長期仕掛事案とは?
税務調査の手続きが大幅に変わり、
税務調査の実施件数が大幅に減少しました。
調査官も、税務署内では「適正に手続きを履行したか
どうかを確認する書面」の作成に追われています。
その最たる書面が「争点整理表」です。
争点整理表とは、調査手続きが(運用上)改正になった
平成24年後半から税務署に導入されている書面です。
争点整理表は、すべての調査事案について調査官が
作成しなければならない書面ではなく、
下記の作成基準が存在します。
【形式基準】
①重加算税賦課決定
②増額更正・決定
③青色申告承認の取消し
④更正の請求に理由がない旨の通知
⑤偽りその他不正の行為による6年前・7年前の
事業年度への遡及
⑥調査着手後3ヶ月超の長期仕掛事案
【実質基準】
調査非協力等により争点に係る証拠収集が難航しているなど、
課税要件事実の立証が容易でないと認められる事案や
法令の解釈・適用が複雑・困難である事案など
処分等の適法性の立証や判断が困難であるが、
課税の均衡上、課税処分すべきと認められる調査困難事案
(形式基準に該当する事案を含む)
※平成24年6月27日付課総2-21ほか6課共同
「署課税部門における争点整理表の作成及び調査審理に
関する協議・上申等に係る事務処理手続について」
(事務運営指針)Ⅱ1(2)より引用
なお、争点整理表を作成する場合は、調査官は
書面を作成するのみならず、争点整理表を
別途決裁する必要が生じます。
(決裁権者は争点によって違います)
難しいことを書きましたが、注目すべきは
⑥の「長期仕掛事案」という形式基準です。
結局のところ、税務調査の件数ノルマを
課せられている調査官としては、
1件1件の調査をスムーズに終えることが優先で、
争点整理表を書きたくないわけです。
(署内決裁書類が増えるだけという認識です)
もちろん、上記の通り
重加算税や更正になる調査事案はそもそも、
長期仕掛事案に該当しなくても
争点整理表を作成する必要性があるので、
どちらにしても手間は同じになります。
逆をいえば、重加算税や更正にならない調査については、
調査着手から2ヶ月を経過した頃に、
「長期仕掛事案にすればあなた(=調査官)が
面倒なだけでしょ!?」
「ここで終わっておけば長期仕掛事案にならないよ」
と交渉すれば、焦点整理表を作成したくない
調査官が手打ちしてくる可能性が高いのです。
実際に、この交渉方法を使って
納税者に圧倒的有利を引き出した調査事案が、
実際に昨年11月にありました。
なお、この交渉方法で調査官から
「争点整理表の存在をなぜ知っているのですか?」
と聞かれれば、下記を明示してください。
下記は情報公開法により開示されている情報ですから、
誰もが知り得る情報です。
「調査手続等に関する当面の事務実施要領について」
(法人課税事務関係)(指示)
平成24年9月20日 課法4-51ほか3課共同
※TAINSで閲覧可能
※同様の内部通達が法人課税以外でも存在します
「課税処分に当たっての留意点」
(平成25年4月 大阪国税局 法人課税課)
※弊社が情報公開法で開示請求・取得しました
税務調査は交渉の「時期」も大事ですが、
実施「期間」によっても交渉ができるのです。
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