2022.12.09

青色取消しの現実的要件

※2021年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に
理解する内容を連載で解説していますが、前回に引続き
「青色申告の取消し」に関して解説をします。

前々回は青色取消しの法律要件、前回は
事務運営指針から重加算税=青色取消しではない
ことを解説してきましたが、今回は青色取消しの
最終回で「現実的な」要件を取り上げます。

私は税務調査に関する質問・相談を多数受けていますが、
調査現場で調査官が言う「青色を取消しますよ」は、
そのほとんどが【脅し】だと捉えていいでしょう
(法人が2期連続期限後申告の場合は、調査ではなく
事務処理として青色取消しが行われます)。

元国税の立場・経験から言わせていただくと、
青色申告を推奨する立場としての国税が
青色取消しを軽々にするはずがないと理解すべきです。

税務調査において実際に青色取消しになる事案は、
原資資料等が破棄されており、実額による
課税ができない、「推計課税」を適用せざるを得ない
調査案件だけでしょう。

推計課税とは、法人税法131条・所得税法156条に
規定される更正(もしくは決定)をする場合の規定で、
青色申告者にはできないことから、税務署は
推計課税による更正をする相手方が青色申告の場合、
青色申告を取り消したうえで更正することになります。

一方で、推計課税の適用に関して現実をみても、
調査先に原資資料等がなくても実際のところは、
(本来の)推計課税を適用しないことが多いです。

あくまでも、所得・税額を確定させるために
推計という手法を用いたとしても、最終的に
納税者が修正申告を提出するのであれば、
更正・決定をしないことから青色申告を
取消す必要性がないからです。

税務調査において立会いする税理士がおり、
調査に協力している(拒否などしていない)以上、
調査官が「青色取消し」と言ってきても、
指摘通りに修正申告を提出して欲しいという
内情からの脅しであることがほとんどなのです。

数多くの青色取消しと指摘されている調査事案を
見てきましたが、結局は法律要件もしくは
事務運営指針から反論すれば、調査官も
すぐに引き下がるケースがほとんどですので、
ぜひ適正に主張・反論してください。

なお本メルマガの本題ではありませんが、
よく質問される事項として、2期連続無申告の
法人が青色取消しされた場合、いつから
青色申告に戻れるのかという論点ですが、
青色取消しを受けた法人は最短でも
3事業年度は青色申告に戻れません。

これは法人税法第123条第三号の規定から、
青色取消しを受けてから1年間は
青色の承認申請が却下されるからです。
時系列は下記となりますので参考までに。

N年:無申告(もしくは期限後申告)
(N+1)年:無申告(青色取消し=白色)
(N+2)年:青色取消しの通知=白色
(N+3)年:通知から1年経過後に申請=白色
(N+4)年:青色申告

来週金曜の本メルマガでは、税務調査の
シリーズ最終回「理由の附記」を取り上げます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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