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2025.02.28

青色専従者給与が高額として否認された場合の課税関係

※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは、青色専従者給与を
必要経費とするためには、実際に支払ったことが要件という
ことを解説しましたが、今回は青色専従者給与が
税務調査において否認された場合の課税関係を解説します。

特に、個人(所得税)の確定申告において、青色専従者給与が
高額と思われる、もしくは専従者がほぼ働いていない実態を
知っている場合、顧問先(個人事業主)に対しては、事前に
否認された場合のリスクを説明しておく必要があるでしょう。

さて、青色専従者給与は労務の対価として不相当に高額である
と認められる場合、必要経費に算入することはできませんが、
その判断要素として税法には下記のとおり規定されています。

所得税法第57条第1項
(前略)その給与の金額でその労務に従事した期間、
労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、
その事業と同種の事業でその規模が類似するものが
支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らし
その労務の対価として相当であると認められるもの(略)

過大判定の要素が多いように思えますが、
ほとんどの税務調査においては、

●勤務実態が無い場合:全額否認

●勤務実態が明確である場合:
一般従業員と同程度の給与水準かどうか
(専従者はあくまでも従業員という扱いであって、
法人役員のように責任等が生じるわけではない)

となります。

また、勤務実態はあるようだが、勤務している時間を
管理していないなど、専従者の労務の提供の程度が
明らかでない場合は、税務署は最終手段として
類似同業者の青色事業専従者給与額の平均額を算出し、
平均を超える額を必要経費として否認することになります。
新しい裁決事例でも下記があります。

「労務の対価として相当と認められる金額は、請求人が
必要経費に算入した青色事業専従者給与の金額ではなく、
類似同業者の青色事業専従者給与額の平均額であるとした事例」
(令和元年9月6日公開裁決事例)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/116/04/index.html

この裁決事例は、歯科医の妻(歯科衛生士)に対する
青色専従者給与が不相当に高額として否認された事案で、
納税者は「使用人の労務管理については、有能で
経験豊富な歯科衛生士の確保が最近の歯科診療所経営の
重点課題であるため、請求人が青色事業専従者である
本件配偶者に対して求めており、なおかつ評価している
最大の労務であり、余人をもって代え難い」などと
主張しましたが、労務の提供の程度が明示できず、
同業者の平均額が採用されています。

本当の問題=課税リスクはここからなのですが、
どのような判断要素にせよ、青色専従者給与が過大として
否認された場合、事業主の必要経費にならないのはもちろん、
過大部分は【専従者に対する贈与】になります。
これに関しては、下記の個別通達があるのです。

「青色事業専従者が事業から給与の支給を受けた場合の
贈与税の取扱いについて」(昭和40年10月8日)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/651008/01.htm

1(青色事業専従者が事業から給与の支給を受けた場合)
その支給を受けた金額がその年における当該青色事業専従者
の職務の内容等にてらし相当と認められる金額をこえる
ときは、当該青色事業専従者は当該青色申告者からそのこえる
金額に相当する金額を贈与により取得したものとする

税務調査において青色専従者給与が否認される場合、
年額110万円以内ということはないでしょう
(それほど不相当に高額ではない場合、一般的には
否認しません)から、青色専従者給与を否認されれば
贈与税が課されるケースがほとんどということになります。

幸いなことに?多くの調査官がこの個別通達を知らない
ことから、実際に贈与税を課された事案は少ないのかも
しれませんが、調査官が贈与税の課税を言ってくれば、
個別通達がある以上、反論はほぼ不可能でしょう。

現実的には、青色専従者給与を一般従業員(=第三者)
であれば支払わない額に設定している事業主も多くいる
わけですが、否認リスクとしては必要経費にならないこと
だけではなく、贈与税の課税リスクまで含めて
顧問先に伝える必要があるのです。注意してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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