青色専従者給与を必要経費とするための支払要件
※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
直近の本メルマガ(水曜)では、個人確定申告の繁忙期ということで、
所得税における判断に迷いやすい事例を取り上げていますが、
今回は「青色専従者給与の支払要件」について解説します。
青色専従者給与で最も勘違いされやすいポイントで、
かつ税務調査の否認対象になる論点として、
「青色専従者給与を実際に支払っているか」があります。
所得税法第57条
(前略)書類に記載されている方法に従いその記載されている
金額の範囲内において給与の【支払】を受けた場合には、(略)
と所得税法に規定されており、法人税における役員給与など
と相違し、原則として未払計上は認められないわけです。
個人事業主の場合、
・事業資金と生活用資金が混在している
・青色専従者給与を支払っていない月などが存在する
・現金手渡しなど明確な支払履歴が残っていない
・専従者の妻に生活費と併せて(ごっちゃに)振込んでいる
など、支払がないのに必要経費に算入している、もしくは
支払の事実が確認できない状況がよくあります。
生活費と青色専従者給与を混在して支払い(振込)をしており、
青色専従者給与の必要経費が否認された事例が下記です。
「共同事務所を営む弁理士から妻に対して給与の支払をした
事実を認めることはできないとして、青色専従者給与の
必要経費算入を否認した事例」(平成15年7月9日
非公開裁決事例 F0-1-107)
【事実関係】
・弁理士の個人事業主
・青色専従者給与の源泉徴収あり
・毎月、事業用口座から生活用口座に100万円を振込み
・この生活用口座は事業主の名義
・青色専従者給与分を出金した履歴はない
(生活費を不定期に出金しているのみ)
・納税者は、青色専従者給与月額30万円から税金等を
控除した手取額を含んだ100万円であると主張
この裁決事例では、「請求人固有の帳簿書類において、
青色事業専従者給与の支払の処理がされているとは認められず、
本件口座からの現金出金の時期及び金額が不定期かつ
不定額であって、青色事業専従者給与としての支払があった
とは認められないことから、所得税法57条1項に規定する
「青色事業専従者給与の支払を受けた場合」には該当しない。」
と判断され、必要経費として認められませんでした。
このように、青色専従者給与の支払事実が確認できない・
明確にならない場合も含めて必要経費にならないことから、
青色専従者給与の届出を出している給与額を
そのまま必要経費に算入することはリスクがあります。
また上記のとおり、青色専従者給与は「原則として」
未払計上は認められないのですが、「相当の理由」がある
場合は、未払計上が認められる余地はあります。
もっともよくあるのが、一時的な資金繰りでしょう。
事業資金が不足した=支払なしの時期のみ未払計上、
その後に支払が行われているのであれば、
「相当の理由」として税務調査でも認容されるはずです。
裏を返せば、長期間未払給与が累積している場合や、
相当期間未払のまま放置されているような場合は、
必要経費として認められないことになります。
個人の確定申告で、青色専従者給与の支払事実を
確認せず定額で計上、BSを合わせるために
未払計上もしくは事業主借で調整することも
実務上は多いと思いますが、リスクについては
顧問先(個人事業主)に説明する必要があるでしょう。
来週水曜の本メルマガでは、青色専従者給与が
不相当に高額として否認された場合の
課税関係などについて解説します。
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