青色申告の取消しと重加算税
※2014年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
さて、今回は「青色申告の取消しと重加算税」ですが、
平成21年1月8日の裁決(全部取消し)を取り上げます。
では、最初に本件の前提条件を記載します。
○ 請求人は土木機械のリース及び修理業を営む法人(A社)
○ 請求人が所有する建設作業用機械装置を関係会社(B社)に帳簿価額で売却
→ 当該建設作業用機械装置は当初はB社で購入し、A社に売却したもの
○ 本件売買契約書は、原処分庁の調査着手日(平成19年4月17日)
の3日前の平成19年4月14日に作成されている
○ その後、B社は当該機械装置をさらに第三者に売却した
○ 原処分庁は一連の取引はA社と当該第三者との直接取引であり、利益の
付け替えを目的にB社を経由したものであり、当該取引は隠ぺい・仮装に
該当するとして、青色申告の取消し及び重加算税となった
この前提の中、国税不服審判所は下記と判断しました(含む。認定事実)。
○ B社は、当該機械装置の購入者に対し、本件請求書を送付し、代金決済は、
B社名義の当座預金口座への振込みによっている。
○ 本件機械装置は、当初B社が取得して、その後A社が帳簿価額で買い
取ったものである。
○ 本件機械装置をB社に売却することとしたのは、■■■■グループの収益
が悪化していたことから■■■■グループでの資金調達の必要があり、
金融機関からの借入れを容易にするため、B社の決算内容を良くすること
にあった。
○ A社の取締役であり、B社の代表取締役であるCは、本件機械装置を含む
請求人所有の機械装置の売却を計画し、当該第三者に打診していた。
○ ■■■■グループは、請求人がB社から同社の帳簿価額で購入した本件
機械装置について、資金調達の必要性からCが中心となって本件機械装置
を含む機械装置を売却することとし、本件取引の実行に至り、本件機械装置
以外の機械装置は、請求人が■■■■(見田村注:購入者のうちの1社と
推察)へ直接売却したことが認められる。
○ 本件機械装置に係る当該第三者からの売却代金もB社が受領している。
○ 請求人は、本件売却益をB社へ利益供与したものと認められるものの、
本件取引は、■■■■グループの資金調達の必要性から行ったものと認め
られ、本件機械装置に係る売却代金をB社が受領し、経理処理も取引の
実態に即してなされていることから、本件取引に係る請求人の行為に
ついて、隠ぺい又は仮装の事実があったとは認められない。
○ 原処分庁は、本件取引は請求人と当該第三者との直接の取引であるにも
かかわらず、請求人は、B社と通謀し、本件売買契約書及び本件請求書を
作成して請求人からB者、さらに当該第三者に売買が行われたかのごとく
形式を整えたものであり隠ぺい又は仮装の事実が認められる旨主張する。
しかしながら、本件売買契約書は、原処分庁の調査着手日の3日前に作成
されたものであるが、契約内容を確認するために後日書面化すること自体
が法律上否定されるものではなく実態上も有り得るものであり、また、
請求人及びB社の双方において本件機械装置をそれぞれ売却又は購入する
意思がなかったとは認められず、加えて、原処分庁の主張を根拠付けるに
足りる証拠は存しない。
○ したがって、原処分庁の主張には理由がない。
○ そうすると、請求人が本件取引において、取引の全部又は一部を隠ぺい
又は仮装した事実は認められないことから、原処分庁が、法人税法
第127条第1項第3号に該当するとしてなされた本件青色申告取消処分
は違法であり、取り消すのが相当である。
→ 重加算税も当然に取消しとなっています。
いかがでしょうか?
グループ法人税制導入前の事案ではありますが、一定の経済合理性の下に
行なわれた本件取引が全部取消しとなったことは非常に貴重な事例となります。
是非、全文をお読み頂き、双方の主張、細かい流れをご確認頂くといいかと
思います。
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