青色申告取消の定量的要件
税務調査でモメると「青色申告を取消しますよ!」
と言い出す調査官までいるから困ったものです。
青色申告の取消に関しては、ほとんどの場合が
「脅し」であることが多いのですが、
取消要件を知らなければ「脅し」かどうか
判別しようがありませんし、反論もできません。
まず知っていただきたいのは、青色申告の取消は
法律では法人税法第127条または所得税法第150条
に規定されていますが、細かくは事務運営指針に規定があります。
「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/000703-3/01.htm
「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm
青色申告取消に対する反論でもっとも簡単なものは、
「定量的(金額)基準に該当しない」と主張することです。
事務運営指針にはこのように規定されています。
(1)青色申告の承認を受けている法人につき、次のいずれかに該当する場合には、
(5)の場合を除き、法第127条第1項第3号の規定によりその該当する
こととなった事業年度以後の事業年度について、その承認を取り消す。
イ 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、
その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち
隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、
当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき
(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。
これがまさに定量的基準なのですが、
かなりわかりにくいので解説を加えておきましょう。
①当初申告所得:1000万円
②更正後の申告所得:3000万円
(増差所得:②-①=2000万円)
③隠ぺいまたは仮装した所得:1000万円
③(不正所得金額)が500万円以上でなければ
その時点で青色申告が取り消されることはありません。
この上記のケースでは、③は500万円以上ですが、
②:3000万円×50%>③:1000万円
ですから、青色申告は取り消されないのです。
つまり整理すると、青色申告取消の定量的要件は、
A:②×50%<③
B:③≧500万円
の「両方」を満たす場合なのです。
(増差所得は関係ありません)
調査官が青色申告の取消をチラつかせた場合でも、
そのほとんどは上記(特にB)を満たしていません。
この定量的要件を知っているだけでも
すぐに反論できますので、ぜひ覚えておいてください。
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2012年11月の当時の記事であり、以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。