非上場株式の迂回取得とみなし贈与
※2014年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
今回は「非上場株式の迂回取得とみなし贈与」ですが、
平成元年3月22日の名古屋地裁を取り上げます。
非上場会社が優良会社である場合、その株価は高くなり、様々な事業承継対策が講じられます。
その中で「第三者を介して、迂回的に同族関係者が取得する」ような
スキームが提案されることがありますが、これを検証してみたいと思います。
まず、この事案の前提条件は下記となります。
〇本件における会社は医薬品卸売を業とする同族会社
〇代表取締役及び妻は自社株を取引先である第三者の会社2社(中外製薬、
日本製薬)に1株50円で譲渡した(合計21万株)
→昭和37年2月1日、昭和38年6月1日、昭和41年8月11日、
昭和41年12月22日に譲渡
〇代表取締役の子(後の代表取締役)は上記2社から複数回に渡り、
1株50円にて同社の株式を取得
→昭和38年8月~昭和43年8月にかけて
〇書面はないが、買戻しの申出がなされた場合には1株50円でこれに
応ずることの依頼、承諾があった
この状況の中、「買戻権の存否」と「買戻権の贈与の存否」が争点となり、
結果は代表取締役が買戻権を有しており、子が上記2社から株式を取得する
ごとに代表取締役から買戻権の贈与を受けていたものとして、贈与税の課税
処分は適法と判断されたのでした。
ちなみに、名古屋高裁(平成4年2月27日、控訴棄却)、最高裁(平成
4年12月4日、上告棄却)となり、納税者敗訴で確定しています。
このような迂回取得に関する問題は今でもあるかと思いますが、
それが否認されるかどうかは事実認定の問題である要素が強いものと
なります。
実際、第一法規の「会社税務釈義」には、同族会社の行為計算の否認に関し、
下記の記載があります。
一般的な租税回避行為の否認、すなわち、当事者が用いた法形式を無視し、
通常行われる法形式に引き直して課税する場合の要件について、平成7年
7月13日静岡地裁は、「租税法の定める課税要件を充足する私的経済活動
ないし経済現象は、私的自治の原則の下、当事者が自由に選択できるもの
であり、同一の経済目的を達成するために複数の法形式を選択する余地が
ある場合に、単に税の負担のより少ない法形式を選択したというだけでは、
そのことだけで直ちに租税回避行為と評価することはできず、このことは、
たとえその行為が同一の経済目的を達成するのに迂回的な場合であつても、
そのことに合理的な理由が認められる限りは同様である。
その場合において、否認の可否が争われる租税回避行為とは、当該法形式を
用いた理由が税負担の軽減排除の目的なくしては純経済的な見地からその
行為を合理的なものとして是認することができない場合、要するに当該
法形式の採用が私的自治の濫用であると評価できる場合に限られるという
べきである。」としている(週刊税務通信No2403、P12)。
ここで「私的自治の濫用であると評価できる場合に限られる」というところ
がポイントでしょう。
いずれにせよ、迂回取得の問題は、みなし贈与、みなし配当等の問題に
発展することがありますので、その運用には十分な注意を払う必要がある
のです。
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