非常勤の医師がもらう金銭は給与?報酬?
※2018年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「非常勤の医師がもらう金銭は給与?報酬?」ですが、
裁決(昭和62年12月25日)を取り上げます。
非常勤の医師がもらう金銭は一般的には給与ですが、
報酬として処理されているケースもあります。
給与とされた裁決(昭和59年5月24日)。
以下は国税不服審判所のホームページより抜粋。
請求人は、病院等の非常勤医師として受けた金員は給与所得ではなく
雑所得の収入金額であると主張するが、[1]非常勤医師としての服務は、
病院長等の管理監督の下に一定期間労務を提供していたものと
認められること、[2]請求人の行う診療行為は高度の専門的知識を
必要とするのであって、診療過程において医師としての主体性が
発揮されることは認められるが、診療に必要な人的、物的設備は
病院等が提供していること等からみて請求人の行った労務の提供に
独立性があるとは認められないことから、当該金員は所得税法第28条に
規定する給与所得の収入金額に当たる。
場合によっては、同族会社を作り、
その法人口座に振り込まれているケースもあります。
では、このような場合、どのように考えるべきなのでしょうか?
税務の前にそもそも論ですが、
医師の派遣は労働者派遣法において禁止されています。
また、株式会社が医療行為の受注をすることは医師法違反になります。
だから、そもそもやるべき行為ではないのですが、
他の法律に抵触したとしても適正に申告されていれば、
「税務的には」問題がないことも事実です。
この参考となるのが、裁決(昭和62年12月25日)です。
この事案における報酬は支払う側では給与と経理処理をしながらも、
法人口座に入金されていたという状況です。
これに関し、審判所は下記と判断しました。
〇請求人は、昭和60年分について、B社を設立した昭和60年
4月23日以降の収入は、病院等からの支払がB社の預金口座に
入金されている事実をもつて、病院等からの収入がすべてB社に
帰属する旨主張するので、以下この点について審理する。
〇請求人が提示した資料、原処分関係資料及び病院等関係人の答述を
基に当審判所が調査したところによれば、次の事実が認められる。
・B社の定款によると、その事業目的は、1)経営コンサルタント、
2)社会保険請求事務の請負い、3)不動産の維持管理及び4)前各号に
附帯する一切の業務となつているが、病院等における請求人の従事内容は、
B社の設立前後とも異なるところはないこと。
・病院等関係者の答述によれば、病院等は、請求人がB社を設立したことを
請求人からの申入れにより承知しているが、その事業内容については
全く認識していないこと。
・また、病院等が請求人の役務の対価をB社の預金口座に送金したのは、
医療技術の優秀な請求人を確保するために、やむを得ず請求人からの
申出に従つたにすぎないものであり、B社にコンサルタントの業務委託を
した事実はなく、それに対する支払をしたこともないこと。
〇以上の事実に前記の認定事実を併せ判断すると、請求人は、
保険医として病院等の保険医療機関において医療行為を行い、
役務についてある程度の自主性は認められるものの、病院等は、
医療法第15条(管理者の監督義務)の規定により、管理者としての
責任のもとに請求人を雇用し、事業を遂行しているものであり、
請求人は、客観的にも請求人個人に専属した資格に基づき役務を
提供して対価を得ていることが認められる。
〇病院等における請求人の従事内容は、客観的にみても保険医である
請求人においてのみなし得るものであり、その役務の提供に対する
対価報酬として受ける金員は、当然に請求人個人に帰属すべき収入
であると判断される。
結果として、他の法律のことも含め、非常勤の医師が
医療行為をした場合は給与に該当することが「多い」ことになる訳です。
しかし、たとえば、ブラックジャック的な場合など、
そうはならないケースも間々あるかと思いますので、
ご注意頂ければと思います。
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