非常勤取締役の適正役員報酬額とは?
※2018年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「非常勤取締役の適正役員報酬額とは?」ですが、
複数の裁決を取り上げます。
同族会社の場合、社長の親族が非常勤取締役であることは多いですが、
「その役員報酬はいくらまでなら税務調査で否認されないのか?」
という質問が出ることがあります。
この場合、顧問税理士として、どのように答えればいいのでしょうか?
いくつかの裁決を見ていきましょう。
下記は「類似法人の状況から適正と判断された金額」です。
〇平成9年9月29日裁決(非常勤取締役3名)
・ 平成4年7月期:122万円
・ 平成5年7月期:116万円
・ 平成6年7月期:180万円
〇平成17年12月19日裁決
・平成15年1月期:1,187,000円
・平成16年1月期:1,860,000円
〇平成20年11月14日裁決
・平成16年5月期:619,152円(4か月)
・平成17年5月期:1,877,167円
・平成18年5月期:1,968,833円
ちなみに、類似法人との比較(実質基準)に関しては、
岐阜地裁判決(昭和56年7月1日)にて、
下記と示されています。
〇実質的基準について令69条(注:現在は70条)1号は、
イ)当該役員の職務の内容、ロ)その法人の収益及び使用人に対する
給料の支給状況、ハ)類似法人の役員に対する報酬の支給の状況、
ニ)その他の事情を勘案すべき旨を定めている。
〇令69条1号が類似法人における役員報酬額を、原告主張のように
単に他に認定の方法がない場合の一応の参考にすぎないと
みているものでないことは文理上明らかである。
〇役員報酬額が客観的に適正か否かを判断するについては、
類似法人における額との比較は不可欠というべきである。
〇ただし、当該役員の職務の内容やその法人の収益及び
その使用人に対する給料の支給の状況等の事情のみによつて、
役員報酬として適正な額を客観的に決定することは著しく困難であり、
いきおいその判断は恣意に流れやすくすることが自明だからである。
ということで、実質基準の判定においては、
同業の事業規模類似法人との比較は必須となっているのです。
そうなると、結果として出てくる金額は
月額10~15万円程度になることが多いのです。
実際の税務調査の現場ではもう少し多額でも
認められていることも多いかとも感じますが、
「具体的な根拠に基づく説明」という意味では
上記の金額になってしまうのです。
顧問先の社長からこれに関する質問をされた場合、
私は「税務調査の現場ベースではもう少し認められると思いますが、
争えば、月額10~15万円になる可能性が高い」と回答しています。
ご参考になさってください。
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