• HOME
  •  › ブログ
  •  › 非常勤役員の適正役員報酬とは?
2017.02.22

非常勤役員の適正役員報酬とは?

※2016年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「非常勤役員の適正役員報酬とは?」ですが、

平成9年9月29日の裁決を取り上げます。

親族が非常勤役員である場合、その役員報酬が高額であるとの否認指摘を

受けることがあります。

本件はパチンコホールを営む請求の非常勤役員の役員報酬が問題になり、

その額は以下となっていました。

〇 H氏

平成4年7月期714万円
平成5年7月期934万円
平成6年7月期954万円

〇 J氏

平成4年7月期326万4千円
平成5年7月期656万4千円
平成6年7月期686万4千円

〇 K氏

平成4年7月期408万円
平成5年7月期738万円
平成6年7月期768万円

この状況の中、請求人は下記と主張しました。

原処分庁は、Hらの職務遂行状況を3名とも同一であると認定し、

過大な役員報酬の損金不算入の判定を行っているが、Hらは請求人に対して

次のとおり三者三様の貢献をしているのであるから、個々の役員ごとに

判定を行うべきである。

〇 Hは、請求人の設立当時から銀行からの借入れの際、担保として

  個人資産を提供し、資金の運営に深く関与している。

〇 Jは、従業員との接触が多いことから、諸般の動静及び状況について

  提言をしている。

これに対し、原処分庁は下記と主張しました。

〇 Hは、昭和62年9月28日に請求人の取締役に選任されているが、

  取締役としての業務分担はなく、また、Yが入院した平成6年4月ころ

  まではまったく出社したことがなく、Yが入院してから時々出社

  している程度であること。

〇 Jは、昭和62年9月28日に請求人の取締役に選任されているが、

  取締役としての業務分担はなく、Xが個人で営む衣料品店の事業専従者

  として、専らその仕事に従事していること。

〇 Kは、昭和61年5月5日に請求人の取締役に選任されているが、

  請求人の職務を遂行した事実はないこと。

そして、国税不服審判所は下記と判断したのでした。

ちなみに、基準となる事業年度を100とすると、下記推移となっており、

「相当高い伸び率であると認められる」と判断されました。

〇 売上:翌年115.6、翌々年107.2

〇 売上総利益:翌年100.2、翌々年109.4

〇 従業員1人当たりの平均給与額:翌年104.9、翌々年106.4

〇 従業員給与の最高額:翌年104.0、翌々年104.1

〇 役員報酬:

  H氏 翌年130.8、翌々年133.6

  J氏 翌年201.1、翌々年210.3

  K氏 翌年180.9、翌々年188.2

結果として、、類似法人の非常勤役員で職務内容が類似する役員の

役員報酬(年ベース)の平均額は下記となっており、「本件役員報酬は

極めて高額」と判断されました。

〇 平成4年7月期 122万円、

〇 平成5年7月期 116万円

〇 平成6年7月期 180万円

審判所が適正額とした役員報酬額は次の通りです(3期とも同額)。

〇 H氏 122万円

〇 J氏 116万円

〇 K氏 180万円

本件で否認された実際の役員報酬は「326万4千円〜954万円」であり、

非常勤役員に数千万円などの非常に高額な役員報酬であった訳でもありません。

この事例から言えることは「顧問先に関する説明責任」です。

顧問先の社長から

「社長の妻(非常勤役員)に対する役員報酬はいくらならOK?」

との質問を受けることもあるかと思います。

その場合、あまり業務に関わっていない前提ならば、

「10万円〜15万円程度」というのが、過去の裁決等から言えることです。

平成17年12月19日の裁決でも「よき相談相手」として存在している

社長の母の適正役員報酬が同程度と判断されています。

しかし、「30万円程度なら否認されませんよ」などと答えようものなら、

それは当然に否認される「可能性」を含み、損害賠償に発展する可能性も

あります。

福岡の税理士法人がDESに関して3億円超の損害賠償請求を受け、

東京高裁で争われている事例が業界各誌を賑わしていますが、

ここから言えることは税理士の「説明責任の重要性」です。

否認リスクが低いものであっても、それは「個々人の感覚」であることが

多く、人により判断が分かれるケースも少なくありません。

税理士にとって重要なことは「否認リスクがあることを説明しておくこと」

なのです。

税理士は非常勤役員(親族)の役員報酬に関して、質問を受けることも

多いですが、私はこう答えています。

「仕事の内容、勤務実態等による総合判断ですが、

公明正大な場で判断されたら、10〜15万円程度になることが多いです。」

最低でも、この程度の情報は説明しておく必要があるでしょう。

顧問先への説明の際に、上記のような採決を提示することも必要でしょう。

もちろん、10〜15万円万円程度が絶対額ではありません。

しかし、公の場で判断されれば、この程度になる可能性が高いことは

顧問先に説明しておくべきなのです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。