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2017.06.15

非常勤役員の適正役員報酬とは?(その2)

※2017年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「非常勤役員の適正役員報酬とは?(その2)」ですが、

平成17年12月19日の裁決を取り上げます。

まずは、前提条件です。

〇請求人は建築業を営んでいる

〇Aは代表取締役Bの母で、請求人の設立以来、非常勤取締役に就任

〇Aの役員報酬は下記

・平成15年1月期に3,300万円(月額は300万円×11か月分)

・平成16年1月期に3,600万円を支給

これに関する請求人の主張は下記です。

〇Aは請求人の設立に際して、資本金額の決定、株主の選定と依頼、

 取締役及び監査役の選定と依頼、設立における司法書士及び弁護士への

 依頼並びに従業員の採用等を行い、その尽力は大である。

〇設立後は、代表取締役のよき相談相手として、請求人の経営に参画。

〇Aの役員報酬は請求人の従業員に対する給与支給額を参酌して

 算定することが最も妥当。

〇請求人は従業員Xに対して月額50万円の給与を支給しているので、

 月額50万円が相当である(結果、550万円、600万円)。

これに関する国税不服審判所の判断は下記となりました。

〇Aの職務の内容等に関する認定事実

・請求人の代表取締役Bは、原処分に係る調査を担当した職員に対し、

 要旨次のとおり申述した。

・Aの職務の内容は、従業員からの悩み事を聞いてもらうことにより

 請求人の仕事が円滑に進むようにしてもらうほか、退職した従業員に

 対する貸付金の集金に行ってもらったことがある程度であり、

 特に決まった仕事はない。

・Bの出勤日時の管理及び仕事内容を明らかにする書類の作成はしておらず、

 請求人の事務室内にBの机はなく、出社時には空いている机を適当に

 使用させている。

・請求人は、原処分庁に対し、Bの職務に関する具体的な資料を提出せず、

 当審判所に対し、Xの職務の内容や勤務の状況等を明らかにしていない。

〇Aの職務の内容に関する判断

・請求人は、Aの設立時における尽力は大であり、設立後は、

 代表取締役のよき相談相手として、経営に参画している旨主張し、

 その代表取締役Bは、上記のとおり申述する。

・しかしながら、設立時における役割、貢献度等自体は職務の内容の

 構成要素でない。

・尽力が大というのもその判断は極めて主観的で、何をもって大というのか

 甚だあいまいである。

・よき相談相手というのも同様に客観性・具体性に欠けるものであり、

 上記主張を認めるには、その裏付けとなる確たる証拠資料が必要である。

・請求人は、何ら具体的な資料を提出しておらず、

 当審判所の調査によっても明らかではない。

・Bの申述内容は、Aの職務は、主に従業員からの相談を受けることであり、

 他に取締役として決められた職務はないとの原処分庁の主張に反するもの

 ではないことからして、原処分庁のなしたAの請求人の取締役としての

 職務内容の把握は、不当ではない。

〇従業員Xに対して月額50万円の給与を支給していることから、

 月額50万円が相当である旨主張するが、請求人は、当審判所に対し、

 Xの職務の内容や勤務の状況等を明らかにしていない。

〇請求人の収益の状況如何にかかわらず、非常勤取締役であるAの職務の

 内容からして、Xに対して月額50万円の給与が支給されていることを

 もって、適正報酬額が月額50万円であるとする根拠とはならない。

〇Aの適正役員報酬額は下記の通りである。

・平成15年1月期:1,187,000円

・平成16年1月期:1,860,000円

結果、この裁決でも前回ご紹介した裁決同様、

月額10〜15万円程度が非常勤取締役の適正役員報酬とされたのでした。

次回は、さらに別の事例を挙げ、総括していきます。

 

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