非常勤役員の適正役員報酬とは?(その3)
※2017年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「非常勤役員の適正役員報酬とは?(その3)」ですが、
平成20年11月14日の裁決を取り上げます。
まずは前提条件です。
〇問題になった事業年度は下記。
・平成16年2月1日〜平成16年5月31日(4か月間)
・平成16年6月1日〜平成17年5月31日
・平成17年6月1日〜平成18年5月31日
〇代表取締役の妻であるAは平成7年11月請求人の取締役に就任
〇支給されている役員報酬の金額は不明
〇請求人は常勤役員と主張、原処分庁非常勤役員と主張
〇請求人は下記と主張
・Aが本社に出社するのは、月に1回か2回ではあるが、株主総会
及び取締役会には常に出席し、議事に加わり、議事録になつ印している。
・請求人は創業から代表者の家族中心に○○製造を営んでおり、
Aは請求人の代表取締役の妻であることから、会社の経営方針や運営
及び使用人の状況等に関して、常日ごろから代表取締役と話合いを持つなど、
会社の経営に常に深くかかわっている。
・請求人は、商品の需要量が供給量を超えている状況にあることから、
Aは厳密にいう「商談」とは違うが取引先との取引が成立した後の接待に
従事し、取引先の要望に応えられないことの理解を求めているが、
これは、代表取締役かAでないと務まらない重要な仕事である。
・Aは請求人の使用人の悩みや相談事に対応するという職務を行っている。
・Aは上記職務の内容の状況から、役員としての職務を果たしているもの
であり、請求人の業績に大いに貢献している。
経営方針の相談や従業員への対応などは納税者がよく行う主張でしょう。
では、国税不服審判所の判断にいきましょう。
〇請求人の経営方針の決定、○○の製造販売及び資金繰り等の重要事項に
係る業務については、それらのほとんどが代表取締役と会長の2人により
判断、決定及び業務遂行が行われている。
〇外部委託したこれらの業務について、Aが請求人の取締役としての立場で
担当することはないと認められる。
〇請求人の仕事をしていないときは、家事や中学生の子供の世話を
していると認められる。
〇請求人の使用人から受ける相談については、Aの出社回数からすると、
頻度は低いことが認められる。
〇Aがその他の職務に従事していることに関しては、本件勤務実態一覧表
並びに代表取締役及びAの申述があるだけで、従事している事実を
裏付けるに足る証拠はない。
〇本件勤務実態一覧表(事務項目別従事日数)」によれば、Aが
平成16年5月期〜平成18年5月期において、取引先の接待などに
従事した1か月の平均日数は、それぞれ3.5日、2.5日、2.8日と
認められる。
〇Aは請求人の経営方針の決定、○○の製造販売、資金繰り等の
重要事項には従事せず、請求人が外部に委託した業務を担当することもなく、
月のうち、接待等の従事日数は僅少であり、請求人の事務所への
出社日数もわずかで、その多くの日数は家事や子供の世話に
費やされていると認められることから、請求人の日常的な役員としての
職務に従事しない、いわゆる非常勤役員に当たるものと認めるのが相当。
〇請求人の売上金額及び売上総利益の状況は、平成15年2月1日から
平成16年1月31日までの事業年度(以下「平成16年1月期」という)を
100とすると、
・平成16年5月期:128.0、131.9
・平成17年5月期:143.7、156.6
・平成18年5月期:172.3、188.4
となる。
〇請求人の使用人1人当たりの平均給与支給額は、平成16年1月期を
100とすると、
・平成16年5月期:102.3
・平成17年5月期は116.4
・平成18年5月期は128.7
になる。
〇Aの役員報酬額は、平成16年1月期を100とすると、
本件各事業年度のすべてが218.2となることから、本件役員報酬額の
伸び率は、請求人の売上金額、売上総利益、使用人1人当たりの
平均給与支給額の伸び率と比較して、相当高い伸び率であると認められる。
〇原処分庁が本件類似法人の選定に当たって採用した要素、基準自体には
合理性に問題はなく、下記が適正役員報酬である(原処分庁と同額)。
・平成16年5月期:619,152円(4か月)
・平成17年5月期:1,877,167円
・平成18年5月期:1,968,833円
いかがでしょうか?
3回のメルマガを通じて、非常勤役員の適正役員報酬を考えてきました。
ただし、そのいずれもが月額10〜15万円程度という結論です。
先日もあるセミナーで税理士から「非常勤役員の適正役員報酬は
いくらくらいですか?」と質問を受けました。
もちろん、単純に「非常勤」というだけでは判断しきれない部分も
ありますが、一般的な同族会社の非常勤役員の適正役員報酬は
争った場合は、月額10〜15万円程度となる可能性が高いのです。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。