面貸しにおける給与・外注費の区分
※2024年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガでは、医師や警備員における業法から
「給与か外注費」の区分について解説しましたが、
今回はいわゆる「面貸し」の業態について解説します。
昨今、急速に拡大・業績を伸ばしている美容室や
マッサージ屋については、そのほとんどがFCか、
もしくは【面貸し】として雇用契約にしていない
=外注扱いで消費税・社保負担がない形態をとっています。
一方で、美容師・マッサージ師を全員外注費で処理している
場合には、税務調査で「給与」と指摘される可能性大です。
例えば、店舗で稼働する美容師・マッサージ師が
全員外注であると仮定すると、店舗の開け閉め・電話対応・
消耗品の発注等、店舗を運営するにあたって
全員が全員外注という論理が通りづらいのは明白でしょう。
あくまでも、美容師・マッサージ師の成果物は
顧客に対する役務提供そのものであって、だからこその
「面貸し」という建前なのですから、店舗運営上の
間接業務は委託業務に含まれないことになります
(外注費の算定が売上の%であることが前提ですが)。
この点からすると、1店舗に最低でも1~2名の
社員(雇用)がいないと、外注費として認められない
というリスクが生じる・高くなることになります。
面貸し=外注費として認められるかどうかの判断要素は
非常に多いのですが、重要な要素を列挙しておきます
(委託契約書締結・請求書発行など当然の事項は除きます)。
●材料費等の負担をしていること
外注費・給与の区分要素として比重が大きいのは
材料費等をどちらが負担しているのかです。
面貸しの場合、売上の40~50%を外注費に
設定しているのだから、手残り50~60%の中から
材料費等を負担しているという主張になるのでしょうが、
これをあえて請求書の内訳で明示することをお勧めします。
(例)外注費が売上の50%で設定している場合
売上額×60%▲材料費10%=50%
●バック率の区分
面貸しの建前として「自身で店舗を持ってないから
顧客を連れて施術等の場所を借りる」ということですから、
美容師・マッサージ師自身が顧客を集客した場合と、
店舗運営側が集客した場合でバック率を変えることで
面貸し=外注の要素が強くなります
(例:55%と45%に区分する等)。
●事業所得での確定申告
税務署が外注費・給与の判断する場合に
最重要視している要素として、受託側(個人)である
美容師・マッサージ師が事業所得として
確定申告をしているかです。
外注費・給与の論点は、金銭の支払側が外注費で
受取側が給与ということは原則あり得ないので、
双方の認識が外注で合致していることを明示するには、
事業所得として確定申告していることが重要で、
この申告があれば税務署も外注費を給与と否認するのは
かなりハードルが高くなります(無申告は論外)。
委託する美容師・マッサージ師には、確定申告書の
控えを提出させるルール設定がベストですが、最低限
契約書に「確定申告義務があること」を明記すること、
また確定申告時期に「確定申告してください」の
書類配布・要請案内することが大事になります
(うちはきちんと指導していますよ、が主張論拠)。
税理士・会計事務所の立場としては、顧問先法人の
外注先確定申告を積極的に受任することによって、
(間接的には)顧問先法人を守ることにも繋がります。
●時間管理・シフト
美容師・マッサージ師の成果物が、カット・施術という
役務提供であることは間違いないですが、全顧客が
事前予約でない以上は、時間管理として
シフト制にするのは致し方ない現実があります
(シフト制など時間管理をしないのがベスト)。
一方で、時間管理を極力していないことを明示する
ためにも「遅刻罰金制度」などは設けないことです。
ここまで、3回にわたって職業・業態別の
給与・外注費の区分について解説してきました。
最後となりますが、給与・外注費の区分について
国税の内部資料(判断基準一覧)を資料化していますので、
こちらも併せて参考にしてください。
「給与所得と事業所得との区分 給与?それとも外注費?」
(平成15年7月 東京国税局)
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