• HOME
  •  › ブログ
  •  › 養子の数の算入制限に関する盲点
2023.10.27

養子の数の算入制限に関する盲点

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「養子の数の算入制限に関する盲点」です。

相続税の基礎控除については、
相続税法第15条に規定されています。

相続税法第15条第1項:
3,000万円+600万円×法定相続人の数

また、相続税法第15条第2項において
上記の「法定相続人の数」を規定しています。

原則:
民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数
→(養子の検証)
養子は、養子縁組が成立した日から養親の嫡出子
となります(民法809条)。
民法上、被相続人の子は、相続人になる、
と定めているため(民法887条)、
被相続人と養子縁組すれば被相続人の相続人となります。
また、民法上、養子縁組は何人でも可能です。
そのため、配偶者と実子1人がいるケースで
3人を養子縁組した場合、民法上の相続人は5人となります。

→(相続放棄の検証)
民法上、相続放棄をすれば、
初めから相続人にならなかったものとみなされるため、
相続人が相続放棄をした場合、
相続人ではなくなります(民法939条)。

例外1:養子縁組した場合
被相続人に実子がいれば、1人
被相続人に実子がいなければ、2人

相続税法では、養子縁組をした場合
相続人の数に制限を加えています。

例外2:相続放棄した場合
相続放棄があった場合でも、
相続放棄がなかったものとした場合における相続人の数

相続税法では、相続放棄をしても
相続放棄していないものとして取扱います。

今回は、例外1について深堀りしたいと思います。

以下のケースで考えます。
被相続人:子A
相続人:子Aの兄弟姉妹3人
→ 
子Aは
配偶者なし
子なし
両親なし(他界)

→ 
子Aの兄弟姉妹の構成は以下のとおり
子Aの両親の実子(兄B)
子Aの両親の養子2人
・兄Bの子C(=子Aの姪)
・兄Bの子D(=子Aの甥)

つまり・・・
子Aの両親は
長男Bの子C(孫)・子D(孫)
と養子縁組したという状態です。

本件は・・・
いわゆる兄弟姉妹相続になります。

そこで・・・
子Aに相続発生した場合
民法上の相続人としては
兄弟姉妹3人が相続人に該当します。

次に・・・
相続税法では例外1(養子)の規制が入るのでしょうか?

つまり・・・
実子がいる場合には
養子縁組は1人までしかカウントされないはずです。

結論は・・・
子Aに相続発生した場合の相続人は
民法上も相続税法上も3人となります。

条文にて検証します。

相続税法第15条第2項

2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の
民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数
(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する
当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ
当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、
その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、
養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

第2項第1号を確認すると
「被相続人に」実子がある場合、1人と規定されています。

本ケースの相続人を再掲します。

子Aの兄弟姉妹の構成は以下のとおり
子Aの両親の実子(兄B)
子Aの両親の養子2人
・兄Bの子C(=子Aの姪)
・兄Bの子D(=子Aの甥)

つまり、ここでいう養子2人というのは
被相続人である子Aの両親の養子であって
被相続人である子Aの養子ではありません。

したがって・・・
相続税法第15条第2項に規定する
養子縁組の規制を受けないことになります。

このことは、下記の留意通達にも
規定されていますので、ご確認ください。

相続税法基本通達15-5

(「当該被相続人に養子がある場合」の意義)
15-5 被相続人の民法第5編第2章((相続人))の規定による相続人
(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合
における相続人をいう。以下15-5において同じ。)が兄弟姉妹である場合は、
その相続人の中に当該被相続人の親と養子縁組をしたことにより
相続人となった者があるときであっても、法第15条第2項に規定する
「当該被相続人に養子がある場合」に該当しないのであるから留意する。
(平元直資2-207追加、平17課資2-4改正)

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。