養子の数の算入制限に関する盲点
※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「養子の数の算入制限に関する盲点」です。
相続税の基礎控除については、
相続税法第15条に規定されています。
相続税法第15条第1項:
3,000万円+600万円×法定相続人の数
また、相続税法第15条第2項において
上記の「法定相続人の数」を規定しています。
原則:
民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数
→(養子の検証)
養子は、養子縁組が成立した日から養親の嫡出子
となります(民法809条)。
民法上、被相続人の子は、相続人になる、
と定めているため(民法887条)、
被相続人と養子縁組すれば被相続人の相続人となります。
また、民法上、養子縁組は何人でも可能です。
そのため、配偶者と実子1人がいるケースで
3人を養子縁組した場合、民法上の相続人は5人となります。
→(相続放棄の検証)
民法上、相続放棄をすれば、
初めから相続人にならなかったものとみなされるため、
相続人が相続放棄をした場合、
相続人ではなくなります(民法939条)。
例外1:養子縁組した場合
被相続人に実子がいれば、1人
被相続人に実子がいなければ、2人
→
相続税法では、養子縁組をした場合
相続人の数に制限を加えています。
例外2:相続放棄した場合
相続放棄があった場合でも、
相続放棄がなかったものとした場合における相続人の数
→
相続税法では、相続放棄をしても
相続放棄していないものとして取扱います。
今回は、例外1について深堀りしたいと思います。
以下のケースで考えます。
被相続人:子A
相続人:子Aの兄弟姉妹3人
→
子Aは
配偶者なし
子なし
両親なし(他界)
→
子Aの兄弟姉妹の構成は以下のとおり
子Aの両親の実子(兄B)
子Aの両親の養子2人
・兄Bの子C(=子Aの姪)
・兄Bの子D(=子Aの甥)
つまり・・・
子Aの両親は
長男Bの子C(孫)・子D(孫)
と養子縁組したという状態です。
本件は・・・
いわゆる兄弟姉妹相続になります。
そこで・・・
子Aに相続発生した場合
民法上の相続人としては
兄弟姉妹3人が相続人に該当します。
次に・・・
相続税法では例外1(養子)の規制が入るのでしょうか?
つまり・・・
実子がいる場合には
養子縁組は1人までしかカウントされないはずです。
結論は・・・
子Aに相続発生した場合の相続人は
民法上も相続税法上も3人となります。
条文にて検証します。
相続税法第15条第2項
—
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の
民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数
(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する
当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ
当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、
その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、
養子の数が一人である場合 一人
二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人
—
第2項第1号を確認すると
「被相続人に」実子がある場合、1人と規定されています。
本ケースの相続人を再掲します。
—
子Aの兄弟姉妹の構成は以下のとおり
子Aの両親の実子(兄B)
子Aの両親の養子2人
・兄Bの子C(=子Aの姪)
・兄Bの子D(=子Aの甥)
—
つまり、ここでいう養子2人というのは
被相続人である子Aの両親の養子であって
被相続人である子Aの養子ではありません。
したがって・・・
相続税法第15条第2項に規定する
養子縁組の規制を受けないことになります。
このことは、下記の留意通達にも
規定されていますので、ご確認ください。
相続税法基本通達15-5
—
(「当該被相続人に養子がある場合」の意義)
15-5 被相続人の民法第5編第2章((相続人))の規定による相続人
(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合
における相続人をいう。以下15-5において同じ。)が兄弟姉妹である場合は、
その相続人の中に当該被相続人の親と養子縁組をしたことにより
相続人となった者があるときであっても、法第15条第2項に規定する
「当該被相続人に養子がある場合」に該当しないのであるから留意する。
(平元直資2-207追加、平17課資2-4改正)
—
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