養子の数の算入制限に関する盲点2
※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは前回に引き続き
「養子の数の算入制限に関する盲点2」です。
前回は、「法定相続人の数」につき
例外1として「養子の算入制限」の一部を検証しました。
今回は、例外2として「相続放棄」を検証します。
相続税の基礎控除については、
相続税法第15条に規定されています。
相続税法第15条第1項:
3,000万円+600万円×法定相続人の数
また、相続税法第15条第2項において
上記の「法定相続人の数」を規定しています。
原則:
民法第五編第二章(相続人)の規定による
相続人の数
→(相続放棄の検証)
民法上、相続放棄をすれば、
初めから相続人にならなかったものとみなされるため、
相続人が相続放棄をした場合、
相続人ではなくなります(民法939条)。
例外2:相続放棄した場合
相続放棄があった場合でも、
相続放棄がなかったものとした場合
における相続人の数
→
相続税法では、相続放棄をしても
相続放棄していないものとして取扱います。
以下のケースで考えます。
被相続人:子A
相続人:母のみ(子Aは未婚)
→
子Aは
配偶者なし
子なし
父は他界
相続人ではないが
兄弟姉妹は子Aを合わせて4人
つまり4人の兄弟姉妹
本件は・・・
母親のみの単独相続になります。
子Aの相続財産は
財産1億円(生命保険を除く)とします。
よって
相続税総額としては以下となります。
1億円-(3,000万円+600万円×1人)
=6,400万円
6,400万円×30%-700万円=1,220万円
母は父の相続により
それなりの財産があるため
自分ではなく、残りの子3人に
相続させたいと考えています。
そこで、母は税理士に相談し
相続開始後3か月前のタイミングで
家庭裁判所へ相続放棄の申述をしました(民法915)。
民法上、相続放棄すると
初めから相続人でなかったものとみなされるため、
第三順位である子Aの兄弟姉妹3人が
相続人として取り扱われます(民法939)。
そうすると、法定相続人の数は3人となり
相続税の節税にも寄与することになります。
1億円-(3,000万円+600万円×3人)
=5,200万円
5,200万円÷3=1,733万円
1,733万円×15%-50万円≒210万円
210万円×3=610万円
よって
1,220万円-610万円=610万円
これが節税額となります。
しかしながら、これでは相続発生後でも
簡単に節税可能となってしまうため
例外2が存在します。
つまり
例外2:相続放棄した場合
相続放棄があった場合でも、
相続放棄がなかったものとした場合
における相続人の数
→
相続税法では、相続放棄をしても
相続放棄していないものとして取扱います。
よって
相続放棄をした場合であっても
相続税法上(つまり、相続税の計算上)は
相続放棄をしていないものとして
相続税の計算を行うことになるのです。
このように、相続税法では
相続放棄をすることによる
節税可能な場面につき、様々な場面で
規制をかけています。
これらの規制については、
違うタイミングでご紹介できればと思います。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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