養子縁組に関する税務上の実務論点
※2023年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「養子縁組に関する税務上の実務論点」です。
相続対策の提案に必ずと挙げられる
「養子縁組」につき、
税務上の実務論点を検証します。
1.節税目的の養子縁組の可否
相続税の節税目的のために
養子縁組を実務上活用する場面が多い
と考えられます。
2017年1月31日 最高裁第3小法廷にて
「節税目的の養子縁組でも直ちに無効とはいえない」
との初判断を示しました。
ただし・・・
相続税の負担を不当に減少させる結果となる
と認められる場合には、当該養子の数を
当該相続人の数に算入しないで相続税の
課税価格及び相続税額を計算することが
できます(相法63)。
2.税務上の論点整理
【1】養子の数に関する算入制限
(相法15-1、2:昭和63年度税制改正)
どのようなケースが「実子とみなすか」を
理解しておくことは実務上必須となります。
また、相続税の計算上、養子が相続人の数
に算入されることにより、相続税の節税効果
が生じるのは、概ね以下5つとなります。
(1)遺産に係る基礎控除額の計算
(2)相続税の総額を計算する場合の累進税率の緩和
(3)生命保険金・退職手当金等の非課税限度額の計算
(4)未成年者控除・障害者控除
(5)相続の一代飛ばし
が挙げられる。
【2】相続税の2割加算制度の改正
(相法18-2:平成15年度税制改正)
平成15年4月1日以後に
相続又は遺贈により取得した財産
に係る相続税について
孫養子に2割加算が適用されるよう
になりました。
ただし・・・
代襲相続の場合には適用がありません。
【3】間接的な節税効果
養子縁組により直系卑属となるため、
そこから副次的な効果が生ずる場面が
あります。
(1)教育資金一括贈与
(2)結婚・子育て資金一括贈与
ただし・・・
これらの制度の実用は
孫など当初から直系卑属に対して
活用されることが多いため、
直系卑属でない者が
直系卑属になって適用されるケースは
実務的にはそれほど多くはない
と推察します。
(3)住宅取得等資金贈与
(4)相続時精算課税制度
(5)特例税率(暦年贈与)
などが挙げられます。
これらは直系卑属でない者が
直系卑属に該当することで
要件の1つをクリアしますが
適用されるケースとしては
長男の妻などが養女になるケースが
適用可能性があると推察します。
また、
養子縁組をせずに遺言を用いて
財産を取得すると原因は「遺贈」
となりますが、
養子縁組後に相続により財産を取得
すると原因は「相続」となります。
その結果として、
(6)登録免許税(2% → 0.4%)
(7)不動産取得税(3% → 非課税)
などにも副次的に節税効果が生じます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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