高級車は必要経費になるか?
自宅家賃が必要経費に認められない判決が確定し、
確定申告の判断がより面倒になってきました。
この判決の解説は、見田村税理士が
簡単に解説していますので、こちらをご覧ください。
http://ameblo.jp/mitamura1023/entry-11766630476.html
さて、よくある質問事項に、
「個人事業主が高級車を仕事用に使っています。
プライベート(必要経費に算入していない)でも
車を持っているのですが、この高級車は
必要経費に算入できないでしょうか?
税務調査で否認されそうで心配なのですが」
というものがあります。
これから解説する裁決は、法人で争ったものですが、
個人事業主にも考え方は適用できますので
一部取り上げたいと思います。
平成7年10月12日裁決
TAINSコード F0-2-048
「請求人は、本件車両については、代表取締役社長が
通勤及び支店へ出張する際の交通 手段として使用する旨
主張するので、社長の出張旅費の支給実績を検討したところ、
交通費は支給されていない事実が認められる。
原処分庁は、本件車両は事業の用に供された実績が明らかでなく、
イタリア製の高級スポーツカーで一般社会常識から見ても
個人的趣味の範囲内のものであり、同族会社ゆえにできる
行為であると主張するが、そうであるとしても、
現実に請求人の事業の用に使用されていることが
推認できる以上は、原処分庁の主張を採用することはできず、
また、代表取締役社長が請求人とは別に外国製の車両3台を
個人的に所有しており、請求人の減価償却資産としていない
ことを併せ考えると、請求人が本件車両を資産として
計上していることを不相当とする理由は認められず、
本件車両に係る減価償却費等を損金の額から減算した
原処分及び本件車両の取得費等を役員賞与と認定した
原処分は、いずれも取り消すのが相当である。」
つまり、高級車であろうと、事業の用に供していたら
減価償却費は必要経費(裁決では損金)に算入できる、
という、当たり前のことを判断しているにすぎません。
しかし・・・です。
裁決になっているということは、税務調査で否認され、
更正(処分)を受けたということですから、
「心配しなくても経費になるんだ」では済みません。
省略していますが、この裁決の中で
争われた論点として、下記が挙げられます。
①出張旅費規定を作り、その通り運用すること
上記裁決の事案では、実際に出張旅費規定があり、
日帰り出張(支店巡回)の場合は、交通費を
支給しないという規定通りの運用がなされていました。
(宿泊料・日当・通行料は支給されている)
法人だけでなく、個人事業主であっても
規定は作っておくべき事例の典型といえます。
②出張(支店・営業所への巡回も含む)の際には
運転記録を作成しておくこと
事業の用に供していることを明確に証明できる
資料として運転記録は大事です。
(実際のところ面倒なのですが)
税務調査ではよく、車の走行距離から
事業に使った・使っていないを判断しますが、
運転記録があれば、このようなグレーな
争いを避けることが可能になります。
③プライベートで車を持っている場合は、
明確に公私の区別をしておくこと
裁決事案における代表者は、プライベートで外車を3台を
所有しており、それらは経費に算入していないことから、
経費に算入している車については、
「事業の用に供したことが推認される」と判断されました。
プライベートで車を持っているからダメ、
なのではなく、逆にプライベートで車を
持っているからこそ、経費算入している車は
事業用にため「だけ」に使用しているという論理です。
この点は、上記自宅家賃の必要経費と同じで、
「明確に区分している」ことが大事になるのです。
高級車というだけで、税務調査では否認指摘の
対象になりがちです。明確に区分しないで
否認指摘に反論するのは非常に難しいものです。
ぜひ上記を参考に、必要経費に算入する
根拠資料を準備しておいてください。
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※2014年2月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。