1325高齢創業者(取締役)を社員にして役員退職金を支給するリスク
※2024年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税理士・会計事務所がよく抱える悩みとして、
「高齢創業者がなかなか引退しようとしない」という
現実論があり、この状況下で役員退職金を支給すると
税務調査における否認リスクが高くなります。
下記は、先日相談を受けた調査事案です。
・取締役(会長)が辞任し役員退職金を支給
・役員退職金は功績倍率2.0で計算している
(退職金の計算上で問題はない)
・約10年前に息子に社長を譲り経営から退いている
(退任時には代表権は無い)
・直前期において会長の全保有株式を親族内承継済み
(退任時に会長の持株はゼロ)
・ただし、元会長には取締役退任後に【社員として】
給与を支給し、毎日出社している(経営関与なし)
さて、高齢創業者がスッパリ退任(退社)しないという
問題について区切りをつけるために、
仕事したい/出社したい意向を汲み社員にする
社員としての給与は低額に設定する
(役員報酬の半額以下など)
経営に関与しないことを確約してもらう
という現実的な対応方法がわりと一般的に
なっていると思いますが、これは税務調査において
否認リスクが高いでしょう。
上記の調査事案でいえば、「株式保有なし」
「退任後に経営に従事していない」=社員になった
から役員退職金を支給しても問題ないという
考え方を採用しているわけですが、別観点として
「元会長はみなし役員か」という論点があり得ます。
「No.5200 役員の範囲」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm
創業者本人の株式保有がなくても、親族内に
株式を移転している以上、外形的な要件としては
みなし役員となります。
本来は、退任=役員退職金の支給としていたものが、
みなし役員となれば「分掌変更による役員退職金」
(法人税基本通達9-2-32)として、
実質的に退職したかどうかの判定になります。
一方で、「その会社の経営に従事しているもの」に
該当しないことからみなし役員に該当しない、
もしくは法人税基本通達9-2-32の
「実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている
と認められる者」に該当しないという主張ができれば
役員退職金は認められると考えるのでしょうが、実は
この主張が矛盾してしまうケースも多くあります。
上記の調査事案においては、すでに
10年前から代表権を次期社長に譲り会長時代から
「経営に従事していない」という事情があったことから
この点を主張してしまうと、
会長時代の役員報酬が不相当に高額と否認される
⇒
結果として最終月額報酬が下がってしまい
役員退職金自体が高額として否認される
など連鎖してリスクが顕在化する可能性がありますので
むしろこの主張自体にムリが生じてしまいます。
そもそも論として、
分掌変更による役員退職金は「実質的に
その法人の経営上主要な地位を占めている」か
どうかの事実認定が論点であり、判断基準は曖昧
国税の基本スタンスとして分掌変更による
役員退職金をすんなり認めることはしない
ということから、取締役退任後も
社員として雇用/給与を支給するという行為は
役員退職金の否認リスクが高いと考えておくべきです。
税理士・会計事務所としては高齢創業者に対して、
役員退職金を支給する/しない要件として
完全な二択を迫るべきであり、
取締役退任=以後は一切出社しない=役員退職金を支給
もしくは
継続して仕事をしたい=役員退職金を支給しない
とすべきでしょう。
役員退職金が否認された場合、トリプル課税になる
リスクをきちんと顧問先に伝える必要があります。
「税務調査によって分掌変更役員退職金を
否認された場合の課税関係」
https://kachiel.jp/?p=46584
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