• HOME
  •  › ブログ
  •  › 高齢創業者(取締役)を社員にして役員退職金を支給するリスク
2026.02.13

1325高齢創業者(取締役)を社員にして役員退職金を支給するリスク

※2024年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税理士・会計事務所がよく抱える悩みとして、
「高齢創業者がなかなか引退しようとしない」という
現実論があり、この状況下で役員退職金を支給すると
税務調査における否認リスクが高くなります。

下記は、先日相談を受けた調査事案です。

・取締役(会長)が辞任し役員退職金を支給
・役員退職金は功績倍率2.0で計算している
(退職金の計算上で問題はない)
・約10年前に息子に社長を譲り経営から退いている
 (退任時には代表権は無い)
・直前期において会長の全保有株式を親族内承継済み
 (退任時に会長の持株はゼロ)
・ただし、元会長には取締役退任後に【社員として】
 給与を支給し、毎日出社している(経営関与なし)

さて、高齢創業者がスッパリ退任(退社)しないという
問題について区切りをつけるために、

仕事したい/出社したい意向を汲み社員にする

社員としての給与は低額に設定する
(役員報酬の半額以下など)

経営に関与しないことを確約してもらう

という現実的な対応方法がわりと一般的に
なっていると思いますが、これは税務調査において
否認リスクが高いでしょう。

上記の調査事案でいえば、「株式保有なし」
「退任後に経営に従事していない」=社員になった
から役員退職金を支給しても問題ないという
考え方を採用しているわけですが、別観点として
「元会長はみなし役員か」という論点があり得ます。

「No.5200 役員の範囲」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm

創業者本人の株式保有がなくても、親族内に
株式を移転している以上、外形的な要件としては
みなし役員となります。

本来は、退任=役員退職金の支給としていたものが、
みなし役員となれば「分掌変更による役員退職金」
(法人税基本通達9-2-32)として、
実質的に退職したかどうかの判定になります。

一方で、「その会社の経営に従事しているもの」に
該当しないことからみなし役員に該当しない、
もしくは法人税基本通達9-2-32の
「実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている
と認められる者」に該当しないという主張ができれば
役員退職金は認められると考えるのでしょうが、実は
この主張が矛盾してしまうケースも多くあります。

上記の調査事案においては、すでに
10年前から代表権を次期社長に譲り会長時代から
「経営に従事していない」という事情があったことから
この点を主張してしまうと、

会長時代の役員報酬が不相当に高額と否認される

結果として最終月額報酬が下がってしまい
役員退職金自体が高額として否認される

など連鎖してリスクが顕在化する可能性がありますので
むしろこの主張自体にムリが生じてしまいます。

そもそも論として、
分掌変更による役員退職金は「実質的に
その法人の経営上主要な地位を占めている」か
どうかの事実認定が論点であり、判断基準は曖昧
国税の基本スタンスとして分掌変更による
役員退職金をすんなり認めることはしない
ということから、取締役退任後も
社員として雇用/給与を支給するという行為は
役員退職金の否認リスクが高いと考えておくべきです。

税理士・会計事務所としては高齢創業者に対して、
役員退職金を支給する/しない要件として
完全な二択を迫るべきであり、

取締役退任=以後は一切出社しない=役員退職金を支給

もしくは

継続して仕事をしたい=役員退職金を支給しない

とすべきでしょう。

役員退職金が否認された場合、トリプル課税になる
リスクをきちんと顧問先に伝える必要があります。

「税務調査によって分掌変更役員退職金を
否認された場合の課税関係」
https://kachiel.jp/?p=46584

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。