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2015.10.29

11月の意見聴取は省略になる!?

過去に、「税務調査士」の資格認定講座において、
4時間の講義を担当させていただきました。

その中で、このような質問が出て議論が巻き起こりました。

「書面添付制度について国税側はどう考えているのでしょうか?
実際に書面添付をしても、実地調査に移行するのを前提に
しているのであれば、書面添付をする意味がないと思います」

私も、現役の国税職員やOB税理士と常に情報・意見交換を
していますが、書面添付ほど意見が分かれるものはありません。

少なくとも私は、数字上からこう考えています。

①書面添付をしないで税務調査に入られる確率と、
 書面添付をして意見聴取を受ける確率はほぼ同じ
 (実際の数字はわかりませんので仮定です)

②意見聴取から省略になる割合は、現在で約50%
 (税理士会業務対策部の数字より)

③以上より、書面添付をすれば実地調査が行われる
 確率は、(数字上)約50%(半分)になる

これらの仮説と数字は、現実と大きく乖離していない
はずなので、書面添付の有効性は間違いないと考えています。

さて、書面添付をしていない方にはわかりにくいですが、
実際のところ、意見聴取が行われる時期には偏りがあります。

秋の税務調査において、意見聴取が多く
行われるのは、今月(11月)なのです。

それはなぜか?簡単です。
税務調査の数を調整しなければならない時期だからです。

税務署では半期ごとに、税務調査の件数を決めています。
今の時期でいえば、7~12月で○○件と決めるのです。
この件数は、各調査官にも部門ごとに決められています。

税務調査は8~11月がピークなのですが、
8~10月までに税務調査の数を想定より
こなせていない部門は、11月に意見聴取を行います。

なぜなら、意見聴取さえやっておけば、
「税務調査の件数としてカウントできる」からです。

さらに・・・です。
8~10月に意見聴取があると、実地調査に
移行する確率が高いのですが、11月に
意見聴取があると、省略になる確率が高くなります。

これは、11月に意見聴取を行うということは、
実地調査に移行するなら11月下旬~12月になり、
この時期に調査を行いたくないからです。

つまり、今の時期に意見聴取をするということは、
そもそも実地調査に移行する気が薄いのです。

先日も講座の中で、ある税理士さんが言っていましたが、
同日で複数件の意見聴取を行われるのが今の時期です。

同じ税理士に対して1日で複数件、意見聴取を
行うこと自体おかしいような気がしますが、
これはもとから実地調査に移行する気がないのです。

実は時期によっても、意見聴取の対応が違うことが
おわかりいただけたかと思います。

最後になりますが、実務上は
税理士の意見聴取の対応によって
省略率は大きく変わるのは当然のことです。

確かに調査官(もしくは統括官)によっては、実地調査を
前提とした意見聴取が行われているのも事実でしょう。

しかしながら、意見聴取を受ける税理士が
統括官・調査官に対して、「書面添付制度と
意見聴取の意味・意義」を主張することができれば、
多くの場合実地調査に移行できないものと考えます。

この点、最低限は事務運営指針を読み、
制度の内容と理解をしておくべきなのです。

「法人課税部門における書面添付制度の運用に当たっての
基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/hojin/090401/01.htm

「個人課税部門における書面添付制度の運用に当たっての
基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/shotoku/shinkoku/090401/01.htm

「資産税事務における書面添付制度の運用に当たっての
基本的な考え方及び事務手続等について(事務運営指針)」
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/jimu-unei/sozoku/090401/01.htm

私は何も、書面添付制度の普及を促しているわけではなく、
ただ単純に、調査を省略に持ち込めれば
顧問先が喜ぶだろうということです。

税務署における書面添付の考え方を理解しておけば、
省略に持ち込むことはそう難しいことはないのです。

 

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
※2013年11月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

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