2,000万円超の修繕費が認められた事例
※2016年12月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
今回は「2,000万円超の修繕費が認められた事例」ですが、
平成13年9月20日の裁決を取り上げます。
修繕費が多額になった場合、税務調査でも問題になる可能性があります。
この中で問題になる可能性があるのが、「何らかの物理的付加」が
あった場合の修繕です。
まず、法人税基本通達7-8-1(資本的支出の例示)を見てみましょう
法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額
のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると
認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、
例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
以下、略。
この中で「物理的に付加した部分に係る費用の額」という表現があるので、
何らかの物理的付加があった場合は資本的支出との指摘を受ける可能性が
あるのです。
しかし、本通達にも「例示」と明記してある通り、
ここで示されている事例はあくまでも「例示」です。
だから、「例えば」、「ような」、「原則として」という表現の下、
資本的支出である例が記載されているのです。
当然、多額であるかどうかも関係なく、その修繕の内容によって
変わるという事実認定の問題になります。
本裁決では雨漏り修繕工事(21,714,286円)が問題となりました。
このビルは鉄骨造陸屋根5階建で、昭和52年6月1日が取得日で、
工事完了年月は平成10年10月です。
工事の内容は「陸屋根の上に鉄骨を組みアルミトタン又はカラー鉄板の
屋根で覆った折板屋根工事による防水工事」です。
つまり、「物理的付加」がある工事です。
では、具体的な事実関係、審判所の裁決にいきましょう。
〇 陸屋根のため雨漏りの箇所が特定できず、平成2年に
ビニール防水加工による工事を行ったが、再度雨漏りが始まった。
〇 一般的に鉄骨・鉄筋コンクリート造の陸屋根式建物は、雨漏りが
いったん発生すると雨漏りの経路が分かりにくく完全に修理することは
困難だといわれいる。
〇 工事業者の答述においても、本件工事は応急的に行なわれたものであり、
この工法が雨漏りを防ぐ一番安価な方法であったことが認められる。
〇 さらに、過去何度となく補修工事を行っていたにもかかわらず
雨漏りが続いていたこと等を考慮すると、本件工事を行わない場合には
漏水による建物各部分への影響が不可避であり、結果的に当初予測した
建物使用可能期間を短縮させることになる。
〇 本件工事によって新たに生じた屋根裏の空間には利用価値が
認められない。
〇 請求人が施工した陸屋根全体を覆う防水工事は、
建物の維持管理のための措置であったと認められる。
いかがでしょうか?
他の裁決でも物理的付加が問題になった事例(平成14年8月12日)が
ありますが、これも納税者の主張が認められています。
当然ですが、物理的付加があるからと言って、資本的支出であるとは
限らないのです。
なお、物理的付加とは直接的には関係がありませんが、
旧基本通達235では、下記のものが修繕費として挙げられています。
(1)家屋又は壁の塗替
(2)家屋の床の毀損部分の取替
(3)家屋の畳の表替
(4)毀損した瓦の取替
(5)毀損したガラスの取替又は障子、襖の張替
(6)ベルトの取替
(7)自動車のタイヤの取替
この内容は現行通達には記載がありませんが、この廃止理由は「法令に
規定されており、または法令の解釈上疑義がなく、もしくは条理上明らか
であるため、特に通達として定める必要がないと認めたことによるもの」
とされています。
このため、現在も適用できる考え方ですので、併せて覚えておいてください。
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