JC活動に伴う支出の損金性
※2016年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「JC活動に伴う支出の損金性」ですが、
平成27年7月28日の裁決をご紹介します。
さて、実質的には営業を目的として、JC(青年会議所)に参加している
経営者は非常に多く存在します。
当然、この活動に伴っては一定の経費の支出がありますが、
この損金性はどうなるのでしょうか?
これにつき争われたのが本裁決で「請求人の代表者が青年会議所の会議等に
出席するための交通費、宿泊費及び日当を、旅費交通費として損金の額に
算入し、法人税等の確定申告を行ったところ、原処分庁が、当該費用は
請求人の事業の遂行上必要な費用には当たらず、代表者に対して給与を
支給したものと認められるとして、法人税等の更正処分等を行うとともに、
源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等を行った」という事案です。
以下、国税不服審判所の判断です。
イ 法令解釈
法人税法第34条第1項及び第4項は、法人がその役員の活動について
負担した費用が、当該法人の事業遂行上必要なものではなく、当該役員が
個人的に負担すべきものと認められる場合には、当該法人が当該役員に対し
経済的な利益を供与したものであり、当該費用は当該役員に対する給与に
当たると解するのが相当である。そして、当該費用が当該法人の事業遂行上
必要なものではなく、当該役員が個人的に負担すべきものであるか否かの
判断は、単に当該法人の主観的な意図・判断によるのではなく、当該役員の
活動の内容や当該費用を支出した趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、
社会通念に照らして客観的に行わなければならないと解される。
ニ 判断
(イ)国際JCの目的、日本JC及びQJCの各定款の定めからすれば、
JCは、特定の個人又は法人の利益を目的とするものではなく、社会の発展や
世界の平和と繁栄への寄与といった公益的な目的を達成するために各種の
事業を行うこととしており、日本JC及びQJCの各定款に掲げられた
各種の事業が、特定の個人又は法人の利益を目的として行われるものとは
認められない。
また、本件各会議等においては、国際JCが掲げる目的や日本JC及び
QJCの各定款に掲げられた目的及び事業の内容に則した活動が行われていた
こと、上記ロの(ハ)のとおり、本件代表者は、本件各会議等において、
そのプログラムに沿って活動し、また、本件各会議等の一部については、
主催者の立場でプログラムの内容を企画し、運営するなどしていたことが
認められる。
さらに、本件代表者自身、国際JCが恒久的プログラムの1つとして
「ビジネスの機会」を掲げたことにより、JCの会議等の中で各会員の
事業内容を紹介し、又は、アピールして営業活動をすることができるわけ
ではなく、本件各会議等でもそのプログラムの中で、各会員が事業内容を
紹介することや、事業に関連した営業活動をすることはなかった旨答述
するなど、本件各会議等においてはその参加者が自身の事業活動をする
機会がなかったことが認められる。
そうすると、本件代表者の本件各会議等への出席は、社会の発展への寄与
などのJCの活動目的を遂行するためのものであったと認められるから、
本件旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、請求人の事業の遂行上
必要なものであったとはいえず、本件代表者が個人的に負担すべきもの
である。
(ロ)もっとも、請求人は、本件旅費交通費は、請求人の教育費用、
受注活動費用又は新規事業開拓費用としての性質を有し、また、国際JCが
恒久的プログラムとして「ビジネスの機会」を掲げていることを根拠に、
請求人の事業の遂行上必要な費用である旨主張し、本件代表者は、JCの
活動を通じて各会員間相互の人間関係が形成されるため、各会員の事業内容を
伝える機会が与えられ、それをきっかけに、互いに取引先という関係にまで
発展させることも期待でき、実現もしているなど、各会員が取引先を拡大し、
事業を発展させることができる旨答述する。
しかしながら、仮に、本件代表者が本件各会議等に出席したことが、
取引先の確保や代表者の経営者としての能力の向上、新規事業の開拓に
寄与することになったとしても、本件代表者の本件各会議等への出席が
社会の発展への寄与などのJCの活動目的を遂行するためであったことは
上記(イ)のとおりであるから、それはJCの活動に付随する副次的な効果に
すぎず、本件代表者の本件各会議等への出席が請求人の事業の遂行上必要な
ものであったということはできない。
また、国際JCが恒久的プログラムの一つとして「ビジネスの機会」を
掲げ、会員が行動する社会企業家として必要なビジネスチャンスやビジネスの
成長等を支援すると定めているとしても、それは、JCの会員の利益を目的
として行うものではなく、社会の発展に寄与するビジネスの機会や支援を
表明したものと理解することもでき、本件代表者自身、国際JCが「ビジネス
の機会」を恒久的プログラムとして掲げたことによってJCが主催する
活動に特定の会員が営業活動等を行うプログラムが組み込まれることになる
ものではない旨答述していることに照らせば、国際JCが恒久的プログラム
として「ビジネスの機会」を掲げているとしても、そのことをもって本件
代表者の本件各会議等への出席が、社会通念に照らし客観的にみて請求人の
事業の遂行上必要なものであったということはできない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
(ハ)以上のとおり、本件旅費交通費は、社会通念に照らし客観的にみて、
請求人の事業遂行上必要な費用ではなく、本件代表者が個人的に負担すべき
ものであるから、本件代表者に対する給与に該当する。
いかがでしょうか?
JCの活動に伴う経費を損金に算入しているケースは非常に多いでしょう。
しかし、これは損金にならず、「当該費用が当該法人の事業遂行上必要なもの
ではなく、当該役員が個人的に負担すべきものであるか否かの判断は、単に
当該法人の主観的な意図・判断によるのではなく、当該役員の活動の内容や
当該費用を支出した趣旨・目的等の諸般の事情を総合的に考慮し、社会通念に
照らして客観的に行わなければならない」のです。
結果としての営業になっているかどうかの「法人の主観的な意図・判断」
により判断される訳ではないので、ご注意ください。
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