立証された実額による更正の請求は可能なのか?
※2018年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「立証された実額による更正の請求は可能なのか?」ですが、
平成29年12月13日の裁決をご紹介します。
譲渡所得の計算において取得費が不明である場合、
概算取得費を使うことがよくあります。
しかし、実務上は概算取得費によらず、
市街地価格指数などによって取得費を推定計算することも
認められていますが、当初申告で採用するのか?
更正の請求で採用するのか?によって取扱いが違います。
なぜならば、更正の請求(国通法23条1項)には
「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に
従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあつたことにより」と
記載があるからです。
だから、更正の請求の一般的なケースは「間違い」を前提にしており、
概算取得費の採用は間違いではないので、
この場合は更正の請求が認められないのです。
(実務上は国税のミスにより、還付されたケースがあるようです。)
では、推定計算ではなく、
実額が分かった場合の更正の請求はどうなるのでしょうか?
これが争われたのが本裁決です。
まずは、大前提となる措置法31の4をみてみましょう。
原則は概算取得費、実額が証明された場合は実額ということです。
個人が昭和27年12月31日以前から※引き続き所有していた
※ 通達により、これ以後に取得したものでもOK
土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上
収入金額から控除する取得費は~当該収入金額の百分の五に
相当する金額とする。
ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に
満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との
合計額につき所得税法第三十八条第二項の規定を適用した場合に
同項の規定により取得費とされる金額
証明された場合は「当該各号に掲げる金額」となる訳です。
本裁決では請求人が概算取得費で申告した後、
地価公示価格を基に推計した金額を取得費として更正の請求をしたものです。
当然、この推定計算による更正の請求は認められないのですが、
審判所の調査によって、売主F社の土地台帳に本取引に関する記載があり、
実額の記載がありました。
そこで、審判所は下記と判断したのです。
○本件土地台帳は、宅地建物取引業法により帳簿の備付け義務があるF社が、
通常業務の過程で作成したものであり、書面の性質上、取引内容が
正確に記載されている蓋然性が高い。
○本件土地台帳の記載内容の信用性は極めて高い。
○本件土地台帳は、その記載どおりの事実があったことが推認でき、
当該推認を妨げる事情が認められない限り、その記載どおりの事実を
認めるのが相当である。
○父Hの本件土地の取得費の金額は○○○○円であると認められる。
○本件土地の取得費の金額は○○○○円であり、
これに基づき当審判所が認定した請求人の平成25年分の
分離長期譲渡所得の金額は、別表4のとおり○○○○円となり、
また、所得税等の納付すべき税額は、別表5のとおり○○○○円となる。
そうすると、これらの金額は、本件更正処分の金額を下回るから、
本件更正処分はその一部を取り消すべきである。
いかがでしょうか?
推定計算による更正の請求はどんな方法であれ認められませんが、
「証明できる実額」であれば、更正の請求が可能なのです。
もちろん、大切なのは市街地価格指数などによる当初申告ですが、
「証明できる実額」ならば、更正の請求も可能なのです。
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