3,000万円控除をやめて住宅ローン控除は受けられるのか?
※2019年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
金曜の本メルマガではここまで、更正の請求を主とした
是正措置が可能かどうかを多面的に解説してきました。
では、下記のような事例については、
過去に遡って是正できるのでしょうか。
〇個人が平成29年中に居住用マンションを売却して
2,000万円の利益が出たので、3,000万円控除特例を使い
所得ゼロで申告済み(期限内申告)
〇平成30年中に住宅ローンを借りて居住用マンションを
購入したのですが、シミュレーションしたところ
住宅ローン控除を適用した方が得になりそうだと判明
〇平成30年分の確定申告はまだ提出していない
さて、ここで素直に考えると、3,000万円控除と
住宅ローン控除は重複適用できませんから、
・平成29年分を3,000万円控除を外して
修正申告する
・平成30年分から住宅ローン控除を適用する
ということになろうかと思いますが、
実はこの是正はできないことになります。
この点は国税庁のサイトでも明記されています。
「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用の撤回の可否」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/17.htm
この場合でいうと、当初申告において3,000万円控除を
適用したうえで【適法に】申告されていることから、
後になって「こっちの方が得でした」ということで
適用替えは許されない、ということになります。
もう少し深堀りして考えてみると、
(民法上の)「錯誤」を理由として
当初申告を無効(3,000万円控除はなかったこと)と
主張することが思いつきますが、
そのあたりに触れると非常に長くなりますので、
興味ある方は下記の論文をお読みください。
「当初申告要件となっている課税方法の選択について錯誤を理由とする選択変更の可否」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/90/02/index.htm
ここで大事な考え方は、過去(当初)申告を
是正する場合に修正申告になったとしても、
「こっちの方が有利だから」という理由での
修正申告は認められない、ということになります。
上記のような実例は、実務上よく出てくる
論点になりますので、ぜひ注意してください。