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2021.10.26

貸倒損失:債務免除で寄付金課税になる場合

※2020年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

前回の本金曜メルマガでは、債務免除をする
ことで貸倒損失となることを説明しました。

一方で、債務免除(債権放棄)さえすれば
どんな場合でも、貸倒損失が認められるのか
といえば、そういうわけではありません。

貸倒損失が認められる前提となる考え方は、
「金銭債権が社会通念上回収が不可能と
評価できる事実が必要(課税要件)」
ということなので、

・健全債権

・不良債権であっても弁済を受けることが
できるかどうかが明らかではない

など「回収可能性がある」債権に対して
債務免除をしても貸倒損失に認められない
こともあり得るわけです。

なお、債務免除をしたにもかかわらず、
貸倒損失として認められない場合は、
経済的利益を供与したものとして寄付金課税
(法人税法第37条第7項)となります。

先月「売掛金・家賃の減免と寄付金のリスク」
と題して配信した、コロナショックによる
通達改正も、合理的な理由がない中で
債務免除(債権放棄)すると、相手方に対する
利益供与として寄付金認定されるリスクがある
からこその改正ということでした。

ただ一般的には、債権の相手方が「第三者」
である場合、債務免除によって貸倒損失が
認められることになります。

なぜなら、本来は債権を回収したいわけで、
債務免除するのは「致し方ない」事情がある
(これ以上督促行為などをする方がムダ等)
という解釈になるからです。

また、第三者でない場合、

●完全支配関係(グループ法人税制適用)に
対する債務免除は、その全額が損金不算入、
債務免除益は益金不算入になる

●子会社等を整理・再建するための債務免除は
法基通9-4-1・9-4-2など
別途の規定がある

となるので、注意が必要になります。

また、最後にはなりますが、顧客・取引先
に対する債務免除(売掛金等の減額処理等)が
寄付金課税された公開裁決事例があります。

平成11年6月30日裁決

寄付金とはあくまでも、相手方に対する
経済的利益の供与ですから、「相手方の
救済のために」債務免除すれば寄付金、
一方で「自社の経営のため」であれば
寄付金にはならない(経済合理性がある)
という判断基準となっているものです。
併せて、参考にしてください。

来週金曜のメルマガでは、債務免除の
やり方について解説します。長期滞留債権
について債務免除したくても、相手方と
連絡が取れない・行方がわからない場合も
多いので、その実務を解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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