2026.03.13

税務調査で従業員不正が発覚した場合の対応:第1回

※2024年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査の最盛期になると、毎年のように増える相談は税務調査で従業員の不正が発覚した、
という内容です。

これら「不正」の内容は様々で、金銭の横領・商品の横流し・外注費の水増し・リベートの受領などが挙げられますが、いずれにしても調査官の指摘は

1 従業員が得た金銭・収益は法人に帰属する
2 損害賠償請求権の計上
3 重加算税

が全て重なってくることになります。

法人側からすると従業員不正の被害者であり、
実質的に回収不能な損害賠償請求権が発生する+重加算税では、かなり苦しい調査対応になります。

さて、本メルマガでは複数回にわたって「税務調査で従業員不正が発覚した場合の対応」をお伝えしますが、
今回は従業員が行った不正が法人に所得が帰属するのか、判断要素を解説します。

そもそも論から始めると、
税務調査で従業員不正が発覚した場合であっても法人にその所得が帰属しない=従業員個人に帰属するとなれば、
上記2および3の論点も存在しないことになりますので、
調査対応で第一に検討すべきは所得の帰属ということになります。

例としてリアルかどうかはさておき、
税理士事務所の職員(非税理士)の不正(保険の紹介料)で考えます。

職員が勤務外で行っていた副業で得た収益は当然に職員個人に帰属しますので、
職員が税理士事務所(職務)とは関係なく保険の斡旋をし、
紹介料を得ていたのであれば個人の所得です。

一方で、所長など事務所に内緒で顧問先(事務所との契約関係あり)の保険加入を斡旋し紹介料を受領していた場合は、
本来収益を得るべき主体は税理士事務所となることから、
税理士事務所での収益(雑収入)として計上することになります。

ただ、その税理士事務所が保険代理店でもなければ保険の斡旋を全くしていない/しない方針である場合に顧問先の保険加入を斡旋し得た紹介料について所得の帰属はどうなるのでしょうか。

この例を普遍化して考えると、従業員不正において所得の帰属を考えるべき要素は下記になります。

●事業関連性

法人の事業とは無関係であれば個人の所得だが、
事業関連性があれば法人の所得

●使用した名義

請求書や領収書などの名義や宛名が法人なのか従業員個人なのか

●相手方の認識

税務調査ではこの論点が非常に重要になるのですが、
取引の相手方(上記例では保険募集人や代理店)が取引相手として法人と捉えていたのか、
もしくはあくまでも(従業員の)個人取引と認識していたのか

●金銭の受取口座

不正があくまで従業員の個人口座に入金されていたのであれば個人所得と主張しやすいですが、
法人口座に入金されていた場合は反論が難しい

●受領した金銭の使途

不正により得た金銭を個人的な費消に支出していた場合は個人所得と主張しやすい

上記、税理士事務所の職員不正に戻すと、
保険の斡旋先である保険募集人や代理店が税理士事務所ではなく職員個人からの紹介であると認識しており、
実際に紹介料の支払いが職員の個人口座に振り込まれているのであれば個人所得と主張できる一方で、
あくまでも顧問先を斡旋・紹介していることから事業関連性がないとは言えないわけですが、
その税理士事務所が保険の斡旋・紹介を一切していないという事情があれば、
職員の個人所得だと主張しやすいでしょう。

所得の帰属=実質所得者課税の原則については法人税法第11条や所得税法第12条による漠然とした規定しかありませんので、
税務調査で主張・反論するには上記各要素において有利な要素を強く主張するしか方法はありません。

来週水曜の本メルマガでは、
あまり理解されていない従業員不正における「損害賠償請求権の計上」について詳しく解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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