2014.09.18

税務調査を中止するケース

こんにちは。久保憂希也です。

このメルマガは、元国税調査官の私、久保憂希也が、
毎週、最新の税務調査対策や裏情報をお届けします。

今回は『税務調査を中止する』ケースのお話です。

先日、競馬予想プログラムなどを作成するデータ分析会社が、
平成19年3月までの3年間に競馬で得た配当金を申告しなかったとして、
東京国税局は約160億円の所得隠しを指摘。

追徴税額は重加算税を含めて約60億円とみられていました。

国税局が法人税法違反(脱税)容疑で同社を強制調査(査察)した後、
社長が海外に出国。海外での身柄の拘束ができない告発を見送り、
任意調査による課税処分に切り替えたということです。

国税局は、配当金など資産の保全差し押さえの手続きをとりましたが、
大半は親会社のある香港に移されており、実際の差し押さえ額は
そのうちの約20億円に留まったというニュースがありました。

このような悪質な脱税になると、経営者が雲隠れすることもあります。

原則として税務署は、経営者を見つけ出し、
速やかに税務調査を遂行しなければなりません。

しかし、この経営者が英国籍のため、日本と英国が結んだ租税条約に基づき、
情報交換は可能ですが、海外での身柄の拘束や資産の差し押さえはできません。

さらに任意調査に切り替えたものの、会社の拠点が香港にあり
完全に現金の流れが解明できないために、差し押さえができた額は
3分の1の20億円程度だったというワケです。

現在の国税局の権限では、刑事告発前の出国や海外への資金移動について
完全には防ぐことができない盲点を突かれた恰好です。

このように税務調査を途中で断念するケースもあるのです。

税務調査には、『強制捜査』と『任意調査』があります。

『強制捜査』は、1億円以上の脱税が想定される場合に
裁判所から強制調査許可状を正式にとってから行われます。

今回のニュースの場合も当初は『強制捜査』でした。
しかし、一般の納税者は、ほとんどが『任意調査』です。

『任意調査』は、税務調査に入る旨を顧問の税理士に連絡するなど
納税者の同意があってから、初めて調査を行うことができます。

ところが理由によっては、税務調査を中止にすることもあるのです。
例えば、納税者が入院してしまった場合などです。

私も以前、調査に入った会社の経理を奥さんが担当されていました。
ちょうど妊娠して間もなくで、つわりが酷くとても調査に立ち会える
状態ではありませでした。

さすがにお腹の子に影響があってはいけませんので、
上司の判断によって税務調査を中止にしました。

任意調査にはそこまで強引な調査権限はありません。

あくまで、税務調査を受けることが困難であると判断された
“正当な理由”がある場合に限ってのお話です。

理由なく、税務調査を拒否し続けることは、
法的にも、認められるものではありません。

 

※2009年10月当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんので
ご注意ください。

また、ブログの内容等に関する質問は、
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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