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2016.03.31

調査手続きに違法性があった場合

※2014年9月の当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

 

本ブログでは、税務調査の「手続き」に関しても
情報発信を続けています。特に、国税通則法改正後は、
法改正とともに、国税内のルールなども多数出されています。

・質問検査権の範囲
・事前通知の手続き
・無予告調査の要件
・修正申告の勧奨≠強要  などなど

税務調査の手続きは一通り知った。一方で、
実際の税務調査で手続きに違反した調査官がいれば
どう対応すればいいのか?

非常に面白い判決の紹介が、国税内部の資料にあります。

「課税関係判決紹介 第13号」
(平成25年6月12日大阪国税局課税第一部国税訟務官室)

※TAINSで全文を読むことが可能です。

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倉庫内に入室し、納税者の承諾なしに写真撮影をした調査担当者の行為が、
国家賠償法上の違法となるか否かが争われた事例                   
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■事件の概要

  米国居住(非居住者)の納税者は、日本国内において、輸入自動車用品のインターネ
 ット販売事業を行っていたが、所得税及び消費税等の確定申告書を期限内に提出してい
 なかった。
  調杳担当者A及びBは、納税者が調査に応じる様子がなかったことから、商品を保管
 している倉庫に臨場し、応対した従業員に納税者へ電話を掛けてもらい、調査担当者A
 が納税者に調査への協力要請を行っていたが、納税者は倉庫から出て行くよう申し立て
 、調査に応じなかった。その間、調査担当者Bは、倉庫内の商品等の状況を写真撮影し
 た。
  納税者は、調査担当者が倉庫に無断で侵入し、写真撮影するなど違法な調査等により
 精神的苦痛を被ったとして、慰謝料の支払を求めて本件訴訟を提訴した。

■納税者の主張

  納税者は、調査担当者らに対して、電話で一貫して税務調査に応じるつもりがなく、
 倉庫から退去するよう求めたにもかかわらず、調査担当者らは倉庫内に無断で立ち入り
 、許可なく写真撮影を行ったのであるから、当該行為は違法である。

■裁判所の判断(要旨)

  相手方の明示又は黙示の承諾がない質問検査権の行使は、特段の事情のない限り、国
 家賠償法上違法の評価を受けるものというべきである。
  本件において、調査担当者らの倉庫内への入室は、倉庫内にいた従業員による黙示の
 承諾があったと認められ、違法とはいえない。
  しかし、調査担当者Aは、納税者が倉庫からの退去を求めていることを認識しながら
 、調査担当者Bによる倉庫内における写真撮影を制止せず、調査担当者Bにおいては、
 調査担当者Aが納税者から倉庫内における調査について承諾を得られていないことを認
 識しながら写真撮影を行ったのであるから、倉庫内での写真撮影は違法であることの評
 価を免れない。
(参考)
  なお、本件は、損害を知った日から3年以上経過した後に訴訟が提起されていたため
 、納税者の損害賠償請求権は時効により消滅しているとして、棄却(納税者敗訴)の判
 決結果となりました。

裁判の論点としては、「税務調査の受忍義務は?」
「黙示の承諾って?」などいろいろあるのですが・・・

納税者が明確に拒否を示しているにもかかわらず、
調査官がムリに行った写真撮影が、判決の中で明確に
「違法」とされ、納税者が勝っているのです。
(結果として、時効にはなっていますが)

さらに、大阪国税局が管内の税務署に出している内部資料に
この判決が取り上げられている点が、非常に興味深い点です。

質問検査権の範囲を逸脱した行為は、
下記の法律により、国税を訴えることが可能ということは、
顧問先を守る税理士は知っておかねばなりません。

国家賠償法第1条第1項
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を
行うについて、故意又は過失によって違法に他人に
損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

私は個人的に、税理士の仕事は裁判までいくことではなく、
税務調査でいかにしてモメないようにすることを考えています。

しかし一方で、通則法で調査手続きがかなり明確になったにも
かかわらず、違法な調査が横行しているのも事実です。

違法性ある調査官の言動に対しては、

「国家賠償法で訴えることもできるんですよ」

と釘をさすことが大事ということです。

 

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一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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