【名義財産の重加算税】外部からもうかがい得る特段の行動
※2022年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今回の本メルマガでは、相続税調査の本丸ともいえる
「名義財産における重加算税」を解説します。なお、
来週は同じ論点で「名義財産を税理士に伝えなかった
事実があれば重加算税になるのか」を取り上げます。
まず、相続税における重加算税の事務運営指針には、
他の税目と相違して具体的な例示が少ないのですが、
名義財産の重加算税に該当するとすれば下記でしょう。
「相続税及び贈与税の重加算税の
取扱いについて(事務運営指針)」
第1 賦課基準 1 相続税関係
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務を
つくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を
圧縮していること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先
その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること
及びその他の事実関係を総合的に判断して、
相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを
申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
一般的には、名義預金を筆頭とした名義財産は、
あくまでも納税者の「認識漏れ」「勘違い」に
よるものであれば重加算税にはなりません。
相続税調査において名義預金などが発覚すれば、
「相続人が把握もしていない預金」であったり、
「名義が違うことから申告が不要と認識していた」
ということがほとんどでしょう。
このような場合、国税通則法に定める
「仮装または隠ぺい」に該当しないことはもちろん、
上記の事務運営指針にも該当しないことから、
申告漏れの名義財産が発覚しても重加算税が
課されない、ということになります。
では、前提が少し違うケースではどうでしょうか?
・相続税申告を不要として提出していなかった
・相続財産を過少に記載したお尋ね文書を提出
・税務調査が入り相続税額が発生
・期限後申告に対して重加算税が賦課された
このように、お尋ねの回答内容と相違する場合の
重加算税賦課に関して、下記の裁決があります。
「請求人が法定申告期限までに相続税の申告を
しなかったことについて、国税通則法第68条第2項
の重加算税の賦課要件を満たしているとはいえない
とした事例」(令和元年12月18日裁決)
前提事実として、納税者が「市民税課」の職員
であった事実から「税務知識を相当有する者」など
の争いはありますが・・・結果として、
「お尋ね文書に意図的に虚偽の記載をして
これを提出したと認めることができない」
「当初から本件相続税を申告しない意図があり、
かつ、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動
があったとされる事情は見当たらない」
として、納税者が勝った裁決事例です。
特に、昨今の重加算税事案において重要なのは
「外部からもうかがい得る特段の行動」が
あったかどうかの事実認定になるのですが、
この論点は税目に関係なく重要です。
本メルマガでも以前何度か取り上げた論点ですので
下記の記事(過去メルマガ)を参考にしてください。
上記の裁決事例では、税務調査時に相続人が
相続財産一覧表を提出し、一覧表に記載された
財産以外に相続人等が相続により取得した財産は
確認されなかったという事実から、相続財産を
隠匿するような「外部からもうかがい得る
特段の行動」はなかったと判断されたのです。
さて、上記の裁決事例は税理士がついていなかった
わけですが、相続税申告を税理士が受任しており、
税理士が名義財産の確認をしたにもかかわらず、
相続人が税理士に名義財産を(一部)伝えなかった
場合の重加算税はどうなるのでしょうか。
来週水曜の本メルマガでは、この論点を争った
裁決事例を複数挙げて解説しましょう。
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