みなし役員に対する反論
※2020年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
法人に対する税務調査で問題になりやすい論点として
「みなし役員」による否認指摘があります。
株主もしくは株主グループに属する者が、
使用人として(役員報酬ではなく)給与を受ける、
また役務提供の対価を外注費として受ける場合、
みなし役員と認定されると、定期同額を満たさない、
仕入税額控除がない、と否認指摘されるケースです。
このように、みなし役員として否認指摘された場合、
そもそも論で認識が間違っていることが多く、
みなし役員の定義が株主グループの判定「だけ」
だと考えているケースが多くあります。
みなし役員の定義は、株主グループの判定を満たし、
かつ【その会社の経営に従事している】
ことになります。
「No.5200 役員の範囲」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5200.htm
形式要件はもちろんですが、「経営に従事する」
という実体・実質判定が必要となります。
ここで、「経営に従事する」とは税法上に明確な
定義はなく、あくまでも事実認定によるものですが、
判決・裁決などを参考にすると、
「事業運営上の重要事項に参画」することを
意味することになります(この論点は、
分掌変更による退職金と同じ議論です)。
「みなし役員判定における「経営に従事」の判断」
https://www.tabisland.ne.jp/yakuin/contents/yaku01_04.htm
上記のサイトにもありますが、法人の重要事項の
決定とは、例えば下記などが挙げられます。
・経営方針の決定
・主要取引先の選定・重要な契約に関する決定
・借入の計画・実行
・従業員の採用
・資金繰りの決定
・従業員賞与の査定
・従業員の労務管理
・組織変更などの重要事項の決定
・事務所等の移転の決定
税務調査において調査官は往々にして、
形式要件をもってみなし役員として
否認指摘する一方で、納税者・税理士が
「経営に従事していない」という実質判定で
反論しない・できていないために、
否認指摘を受け入れるケースが多いのです。
また、国税側としてもみなし役員と認定するには
事実認定のための証拠収集はかなり難しく、
実際に証拠不十分で判断が覆った裁決もあります。
「請求人の使用人について経営に従事していた
とは認められず、みなし役員に該当しないとして
処分の全部を取り消した事例」
(平成28年3月31日裁決)
http://www.kfs.go.jp/service/JP/102/09/index.html
みなし役員の指摘を受けた場合は安易に
受け入れず、実体・実質判定の論点まで
持ち込んだ反論をすることが大事なのです。
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