不動産管理会社の手数料は20%でも【本当に】否認されないのか?
※2017年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は
「不動産管理会社の手数料は20%でも【本当に】否認されないのか?」
ですが、3つの事例を取り上げます。
(1)裁決等ではなく、20%について更正された税賠事例
「税理士職業賠償責任保険事故事例」(2013年版)から一部を抜粋
所得税につき、個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースしたところ、
同族会社が受け取る管理料相当額が「著しく高額」として
同族会社の行為計算の否認により更正処分を受けた。
これにより更正による追徴税額につき、損害が発生し、
損害賠償請求を受けた。
依頼者は、個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースする場合、
その賃料について税理士に相談したところ、
税理士から「同族会社に支払える不動産管理手数料は20%が税務上の限界」
とのアドバイスを受け、これに基づいて賃料を決め申告を行った。
しかし、その後の税務調査で同族会社が受け取る管理料相当額が
「著しく高額」として同族会社の行為計算の否認により更正処分を受けた。
本件は、結果として更正処分を認めており、
追徴税額は「本来納付すべき税額」となるため、
保険金支払いの対象外であると判断された。
(2)裁決(平成13年9月25日)
〇 請求人の主張の一部
平成7年4月17日の週刊税務通信2374号
によれば、適正不動産管理料割合は20パーセントが目安と書かれて
いることにかんがみ、別表3の「請求人主張額」欄のとおり、
本件管理料のうち■■が集金した賃料等の20パーセント相当額が
必要経費に算入されるべきである。
〇 審判所の判断
原処分庁が、本件管理契約書の効力が継続しておらず、
それに基づく管理業務も行われていないと認定して、本件管理料の
すべてについて経費性を否定したことは、課税要件事実の認定を
誤ったものであり、本件更正処分は違法である。
したがって、請求人の主張どおり、賃料の集金額の20パーセント相当額を
必要経費と認め、本件更正処分のうちこれを超える部分を取り消すのが
相当である。
(3)東京高裁(平成13年9月10日判決)
控訴人らは、仮に管理料割合を用いてその適正賃料を算定するとしても、
適正管理料割合は20パーセントを目安とすべきである旨主張し、
これを裏付けるものとして甲二(週刊税務通信の記事※)、
甲八(税理士Eの陳述書)を提出する。
しかしながら、甲二は、雑誌社の担当者が実務の傾向を推測して作成した
記事にすぎず、しかも、20パーセント以内であればフリーパスということ
ではなく、基本的には個々の建物の規模、地域性、管理業務の内容等に
則して判断される旨付記しているのであって、この記事をもって
適正管理料割合を20パーセントとすべきであるといえないことは
明らかである。
また、甲八によれば、D調査官は、当初、管理料割合を20パーセント
として賃料収入を計算し、修正申告をするように指導したというのであるが、
仮にそのような事実があったとしても、それは、税務の簡易迅速な処理
のため、詳細な調査を行う前の段階で示した修正申告案とみるべき
であって、これをもって、課税処分を行う場合の基準とすべきである
ということもできない。
さらに、甲八添付の資料3及び4に記載された各建物と本件建物との間には、
所在地の近接性、立地条件の近似性、テナントの種別や管理業務の内容等の
共通性が認められず、上記資料3及び4記載の例は本件における
適正管理料の割合を20パーセントとすべきとする根拠にはならない
というべきである。
※ 平成7年4月17日(2374号)
いかがでしょうか?
一般的には「20%までは否認されない」という話もありますが、
これらの事例を見ると、「20%は絶対的安全圏ではない」ことが
分かります。
(1)の税賠事例のようにならないためにも、
不動産オーナーに対する提案は慎重に行なう必要があるのです。
また、20%で設定したとしても、
その課税リスクの説明は「適正に」行なっておくべきなのです。
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