不正によって課税事業者になった期間は全額重加算税か?
※2019年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
11月に入って急激に、顧問税理士がいない個人事業主
の税務調査案件に関する相談が増えました。
税理士からすると、調査立会いのスポット案件です。
そもそも関与がないわけですから、調査対応が
難しいのは当然かと思いますが、それ以上に難しいのは
顧問先の調査であれば「あり得ない論点」が
出てくるため、知識がなく、調査官の言いなりに
なりやすいことには注意が必要です。
さて、先日あった調査の相談事例を取り上げます。
・調査立会いのみの案件
・個人事業主で平成28~30年の3年分が調査対象
・全ての年分で売上が1,000万円以下で申告
・平成28年分の売上が約1,000万円除外されている
(平成30年分は約400万円の売上除外あり)
・この売上除外が重加算税対象となるのはやむを得ない
・調査官は「所得税に重加算税が課されると自動的に
消費税にも重加算税が課される」と説明した
さて、この論点ですが非常に注意が必要です。
なぜなら、調査官が理解を誤ったまま、
そして納税者と税理士が正しい理解をしないうちに
本来は対象にならない重加算税が課される
ケースが多くあるからです。
まず、下記の事務運営指針をご覧ください。
「消費税及び地方消費税の更正等及び加算税の
取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shozei/000703/01.htm
調査官が言う「所得税に重加算税が課されると
自動的に消費税にも重加算税が課される」を
2つのケースに分けて考えましょう。
[1]所得税と消費税の連動
課税事業者の期間であることを前提にしますが、
上記事務運営指針4の2にある通り、所得税で
重加算税の場合は消費税も重加算税になります。
[2]課税事業者になった場合
上記調査事案のように、前々年において
1,000万円を超えることになった場合、
その原因が重加算税対象であったとしても、
新たに課税期間になった消費税に対して
全額重加算税が課されるわけではありません。
上記事務運営指針4(重加算税の取扱い)5(1)
「その原因たる前々課税期間の不正事実に連動した
次の事実に起因して当該課税期間に係る消費税額が
増加するときであっても、その増加額に重加算税を
課すべきことにならないのであるから留意する。」
ですから、上記調査事案において調査官の
主張が意味するところが、
○平成30年分の売上除外400万円
⇒
所得税が重加算税
⇒
課税期間になるので該当する消費税も重加算税
ということであれば合っていますが、一方で
○平成30年分が新たに消費税の課税期間
⇒
調査での増差分以外にも新たに発生する
消費税全額に重加算税
ということであれば間違っているのです。
これは事務運営指針4(重加算税の取扱い)5(2)において、
簡易課税から原則課税になることで
新たに発生する消費税についても同じです。
税務調査によって前々年の売上が
重加算税対象である場合、その消費税全額に
重加算税が課されるわけではないので、
事務運営指針を示して主張する必要があります。
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